5年で90倍─。Liイオン2次電池の市場が今,大きく変貌しようとしている。電動車両の市場投入をきっかけに,5年後には3兆円を超える大市場に成長する見込みだ。新規参入メーカーを巻き込みながら,熾烈な技術開発競争が幕を開けた。
巨大市場を狙う Liイオン2次電池
目次
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第7回:三菱重工業は産業機器,IHIは自動車で攻める
三菱重工業は「まずは自社の産業機器で足場をしっかり固める」(同社 リチウム二次電池事業化推進室 次長の鎌田巧平氏)。2009年10月に発売したハイブリッド・フォークリフトには,早くも同社製のLiイオン2次電池を搭載した(図A-1)。
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第6回:日本は大容量モジュールで先行
ただし,投資額だけを見れば,日本の電池メーカーは海外メーカーに劣ってはいない。今後は戦略的な投資に加えて,大容量Liイオン2次電池に適した新規材料を投入するなど,技術開発で先行する必要がありそうだ。
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第5回:中国,米国が脅威に
韓国だけではなく,中国や米国も大きなライバルとして急浮上している。特に,中国は急成長する内需に支えられ,独自のLiイオン2次電池市場を形成しそうだ。自動車の年間販売台数は1200万台と,世界一の米国と肩を並べるほどにまで成長した。さらに,北京市や上海市など大都市部で進む環境政策によって勃興した200…
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第4回:一般家庭の蓄電用途も
一般家庭にも導入を見込めそうだ。実際,三洋ホームズは,2009年11月から大容量Liイオン2次電池付き住宅の販売に踏み切った。負荷平準化と非常用バックアップ電源,昼間蓄電した太陽光発電による電力を夜間にLED照明などに利用するという注3)。さらに,安価な深夜電力を蓄えておき,太陽光発電による電力が少…
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第3回:鉄道や産業機器,そして家庭へ
電動車両向けに大容量Liイオン2次電池の生産が本格化すれば,その価格は大きく低減しそうだ(図4)。新規ラインを導入するに当たり,全自動化することで人件費を削減すれば,「20万円/kWhだった電池コストを半分に抑えられる」(ある電池メーカー)とする。これに加えて,電動車両向けで大量生産すれば,2015…
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第2回:電動車両向けが主導権
電池メーカーだけではなく,異業種からの新規参入も相次いでいる。日本では,重工業メーカーである三菱重工業とIHIがこの分野に進出してきた。三菱重工業は,約100億円を投じて長崎造船所に実証工場を建設し,2010年秋から年間66MWhの生産を開始する。
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第1回:世界で始まる投資競争
2010年秋に,電気自動車「リーフ」を発売する日産自動車。2010年度に5万台,そして2012年度には20万台を生産するという野心的な計画をぶち上げた。Liイオン2次電池の生産量にすると,リーフ1台当たり24kWhの電池容量があることから,20万台分では4800MWhにも及ぶ。これは,現状の携帯電話…