時々刻々変動する太陽電池からの電力を、家庭などで利用できる電力に変換するのがパワー・コンディショナの主要な機能である注1)。太陽電池で発生した変動する直流電力を、コンバータで昇圧などしてインバータに送り込み、ここで交流化するというのが、基本的な構成になる(図1注2)

注1) 太陽電池の業界やJISでは、パワー・コンディショナは「パワーコンディショナ」と表記される。

注2) パワー・コンディショナと系統電源の間に絶縁トランスを設置するタイプもある。しかし、絶縁トランスによって効率が2ポイント程度低下する。絶縁トランスの設置の要否は各国の関連法規や基準、システムのサイズなどによって異なる。

図1 パワー・コンディショナの基本構成例
太陽電池パネルで発電された直流電力に対してコンバータで昇圧などを施し、インバータで交流に変換する。
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 パワー・コンディショナの高性能化については、これまで単体での高効率化を中心に開発が進められてきた。例えば、効率低下をもたらすトランスを排除したトランスレス方式の採用、高圧の電圧のスイッチングを最小限に抑える階調制御方式の採用などである。

 最近では、パワー半導体として広く使用されてきたSiに代わって、SiCといった高性能な半導体材料を使用して、さらなる高効率化を目指す動きが活性化している。

 パワー・コンディショナ単体での高性能化では90%台後半を超えるような製品が見られるようになってきたことから、現在では開発の軸が太陽電池システム全体の効率化に移り始めている(次ページの図2)。この軸とは別に、太陽電池システムなどの自然エネルギーによる発電システムが大量に系統につながる時代を見据え、電力会社の系統に影響を与えない技術についても、急ピッチで開発が進んでいる。

図2 パワー・コンディショナの技術トレンド
高効率化競争から、システム効率、さらには系統の安定化へと注力ポイントが移り変わっている。
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単体の高効率化はSiCの採用が鍵

 パワー・コンディショナ単体の高効率化については限界に近づきつつあるが、電力の変換損失を減らす余地はまだあるので、もっと減らしてほしいという要望が強い。変換損失のさらなる低減化を実現できれば、より多くの発電電力が得られるだけでなく、温度上昇を抑えることでパワー・コンディショナの小型化や長寿命化が達成できるからだ。