図2 設置角度は10度
風の影響を考慮して設置角度は10度とした。この他に、雑草の生育を妨げる処置を施して、太陽電池モジュールの高さを抑えた。
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図3 架台のコストを削減
風の影響を受けやすい場所のみ基礎のコンクリートを厚め(左の矢印部分)にすることで、架台のコストを削減した。
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 浮島太陽光発電所は、海に面しているために風が強いという課題がある。これに対しては、モジュールの設置角度を10度と低くして、架台と基礎部分の軽量化を可能にした(図2)。一般的な設置角度である30度にすると発電量は増すが、モジュールの設置高が増すため、架台や基礎を強化しなければならない。こうした発電量と設置コストの評価を、東京電力の研究所で実施した上で、今回の10度を選択したという。さらに基礎のコンクリートは、風の影響を受けやすい場所のみ厚くすることで、全体のコストを低く抑えた(図3注4)

注4)扇島太陽光発電所は、風を避けるための壁を発電所の周囲に設置し、架台や基礎を簡素化してコストを下げている。

 設置に関するもう一つのポイントは、廃棄物埋め立て処分地という環境に合わせた工夫を随所に取り入れていることである。廃棄物埋め立て処分地では、雨水を均等に浸透させて土地を浄化する必要がある。このため、架台に設置するモジュールを2列と少なくするとともに、各モジュールの間隔を空けることで隙間を多くして、雨水が均等に土壌に浸透できるようにした。浸透した水を処理するために設けてある施設や、そのための通路などを避けて太陽電池を設置している。川崎市との契約では今後18年間メガソーラーを設置することになるが、その間に土地の浄化も終わる見込みである。

 この他に、土地の表面には抗菌・殺虫力に優れたスギやヒノキの間伐材などを加工した材料を混ぜることで、雑草の生育を抑制している。これにより、除草に関わる維持管理費を抑えるとともに、モジュールの設置位置を低くすることが可能になった。太陽電池の設置前は雑草が覆い茂っていたというが、現時点ではほとんど雑草は見られなかった。

図4 系統安定化の機能も備える
パワー・コンディショナには、系統安定化のための機能も実装した。ただし、現時点ではその機能を利用していない。
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 パワー・コンディショナは、250kW対応機を4台まとめたものを7カ所に設置している(図4)。現時点で利用していないが、パワー・コンディショナには系統安定化の機能も加えているという。今後、周囲に太陽電池などの設置が増えて系統に影響を及ぼす可能性がある場合に利用する計画である。

 系統安定化機能には(1)需要が少ないときに電圧の上昇を防ぐ「電圧制御機能」、(2)系統の周波数が変動した際に出力を抑制する「周波数変動抑制機能」、(3)需要が少ない時期に出力を抑制する「出力抑制機能」、(4)系統の電圧降下時に一斉に停止することを防ぐ「不要解列防止機能」を用意した。

図5 発電状況を公開
浮島太陽光発電所の発電状況は、誰でもWebサイトで閲覧できる。本誌が取材した日は晴天で、3万3684kWhの発電実績があった。(写真:東京電力)
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 なお、浮島太陽光発電所は川崎市が運営する「かわさきエコ暮らし未来館」にて見学できる他、発電量をWebサイトで閲覧できる(図5)。取材に訪れた日は晴天だったため、3万3684kWhの発電実績があった。これは一般家庭3575軒が一日に消費する電力量に相当する。