1970年代に電機産業によって本格化した海外生産は、1980年代に自動車産業に波及し、それに伴って多くのサプライヤーも海を渡った。もう、かれこれ40年、人間で言えば不惑を迎えている。これら日本企業の海外展開は、計画通りうまくいっているのだろうか。

 ある研究によると、20年、30年かけて、国内のマザー工場の生産方式を現地にうまく移植した成功例もあるが、多くの日本企業がいまだに苦戦しているのが実情だという。これは筆者の実感とも一致する。国内のマザー工場では優れた結果を出しているのに、なぜ海外では苦戦するのか。なぜ生産方式を移植するのが困難なのか。その解を導き出すにはまず、日本の経営環境の特殊性を理解する必要がある。

 国内生産は、労使協調を当然と考える従業員と、協力的で信頼できるサプライヤーに支えられている。これを当然のことと思いがちだが、日本から1歩外に出たらこんな幸運に恵まれるとは限らない。ここが日本の最大の特殊性だ。海外では幸運を期待せずに、ゼロから自前で対処しなければならない。