ソニー・グループがスマートフォン向けゲーム市場への参入の“シンボル”として最初に発売したのが、日スウェーデン合弁Sony Ericsson Mobile Communications社がSCEと共同開発したAndroid搭載スマートフォン「Xperia PLAY」である。2011年4月から欧州や台湾、香港などで販売を開始した。

 Xperia PLAYは、PlayStation Certifiedの認証を受けた初めての端末。スライド型の筐体を採用しており、スライド時には筐体下側から、ゲーム用の十字キーと入力ボタンが現れる。その姿はまさに、ゲーム機そのものである(pp.38─45の第2部「端末の機能から読み解く、ソニーと任天堂の狙い」参照)

 続く2011年秋以降には、 PlayStation Certifiedの認証を受けたAndroid 3.0搭載のタブレット端末「Sony Tablet」を、ソニーが発売する予定だ。

 一方、SCEは携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」の次世代機として、「NGP(Next Generation Portable)」(仮称)を2011年末に投入予定である。NGPでこれまでのゲーム・ユーザーを取り込み、シンプルなゲームやソーシャル・ゲームなどを楽しむ、いわゆる「カジュアル・ゲーマー」はPSSを通じて取り込む考えだ。

6億台市場を手中に

 ソニーをスマートフォン向けゲーム(モバイル・ゲーム)市場へと駆り立てるのは、同市場が今後、急成長する可能性があるためである。スマートフォンの中でもAndroid搭載機からPSSのサービスを開始するのは、「台数の多さを追求した結果」(SCE 代表取締役社長 兼 グループCEOの平井一夫氏)だという。

 米国の調査会社であるGartner社によれば、2010年に約2億9700万台だったスマートフォンの年間出荷台数は、2015年には約11億500万台にまで伸びる見込みだ(図2)。タブレット端末の年間出荷台数も、2010年の約1760万台から、2015年には3億台近くになるという。中でもAndroid搭載機は、スマートフォンで2015年に約5億4000万台、タブレット端末で約1億1000万台と、計6億台を超えると予測している。

図2 スマートフォンやタブレット端末は巨大市場に
Gartner社は、2010年に約2億9700万台だったスマートフォンの出荷台数が、2015年には約11億500万台に到達するとみる(a)。タブレット端末 の出荷台数は、2010年では約1760万台だったが、2015年には約3億台にまで伸張するという(b)。(図:Gartner社のデータを基に本誌が作成)
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 スマートフォンの中でも、iOSを使う「iPhone」の場合は、米Apple社が「App Store」を通じてゲームを含めた各種アプリを配信している。配信サービスや課金処理などの主導権は、Apple社が握っている。このため、iOS搭載機に向けてApple社以外の企業がゲーム配信サービスを展開するのは極めて難しい。

 今後登場する米Microsoft社の「Windows Phone 7」も同様である。同社は、据置型ゲーム機「Xbox 360」向けに提供しているゲーム配信サービス「Xbox Live」を、Windows Phone 7上で展開する予定だ。今のところ、同社がWindows Phone 7搭載機で他社の配信サービスを利用できるようにする可能性は非常に低い。