SiC製MOSFETは年内に

 省エネを陰で支えるパワー半導体では,SiC製MOSFETの実用化が近づいていることが感じられた。

 ロームは,SiC製パワー素子を利用した新型モジュールによるモータ駆動を実演した(図17)。同モジュールの特徴は,小型で耐熱性が高く,モータに内蔵できることである。SiC製のトレンチ型MOSFETやショットキー・バリア・ダイオード(SBD)をそれぞれ複数個入れた2種類のモジュールをモータ部分に内蔵し,そのモータを駆動させて車輪を動かした。いずれのモジュールも耐圧は600Vで,出力電流は450Aである。

図17 SiC製MOSFETがいよいよ量産へ
ロームはSiC製パワー素子を搭載したモジュールをモータに内蔵し,車輪を動かして見せた(a)。FUPETは「オールSiC」の3相のインバータ・モジュールを開発した(b)。
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 ロームはさらに,SiC製MOSFETの製品化スケジュールを明らかにした。まずは,電流容量が5~10A程度の品種を2010年内に製品化する予定である。2011年春ごろには,さらに多くの企業に向けて製品ラインアップの拡充を図る。SiC製MOSFETの開発には,多くの企業が取り組んでいる。ロームがMOSFETを製品化することで,その開発競争に拍車が掛かりそうだ。

200℃の高温でも動作可能

 SiCに関しては,次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)も,「オールSiC」の3相インバータ・モジュールを展示した。出力は10kWで,体積は約500cm3(外形寸法は151mm×91mm×37mm)。出力電力密度に換算すると,20W/cm3と高い。体積61cm3(外形寸法41mm×40mm×37mm)の小型のパワー・モジュール3個で構成した。

 個々のパワー・モジュールは,JFETとSBDを4素子ずつ搭載している。いずれも耐圧1200Vで電流容量が30Aの,米SemiSouth Laboratories, Inc.の製品を利用した。JFETは,ゲート電圧を印加しないと導通しない「ノーマリー・オフ動作」である。

 開発したインバータ・モジュールは,200℃という高温でも動作可能とする。一般に,インバータ・モジュールでは温度を上げるほど出力パワー密度が上昇するが,温度を上げ過ぎると「逆に出力パワー密度が下がってしまう」(FUPETの説明員)という。そこで今回は,SiC製パワー素子の接合温度(Tj)が200~250℃近辺で,出力パワー密度が最大になるように設計した。今後はさらに出力パワー密度を高める考えたが,まずは25W/cm3にするのが目標である。