エネルギー関連の展示では,創エネや蓄エネ,省エネのほかに,エネルギー利用の利便性を高める“送エネ”の展示が相次いだ(図15)。非接触で機器に電力を送るワイヤレス給電(非接触充電)である。機器をケーブルでつなぐ手間を省くことができるため,電力を利用する機器が増えるのに伴って欠かせない技術になりそうだ。

図15 ワイヤレス給電システムの展示が花盛り
ワイヤレス給電システムの展示が相次いだ。NTTドコモはWPC準拠の携帯電話機向けシステムを展示した(a)。パナソニック電工はワイヤレス給電システム向けの薄型モジュールの新製品を開発(b)。村田製作所は評価キット と応用例を見せた(c)。TDKの実演には多くの人が集まった(d)。パイオニアはEV向けの非接触充電器を参考出展した(e)。
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ドコモがワイヤレス給電をデモ

 ワイヤレス給電はこれまでコードレス電話機や電動歯ブラシなどでの利用が中心で,ほかの用途になかなか広まらなかった。それが,今回のCEATECでは,携帯機器へと用途が拡大する可能性が見えた。

 最大のトピックは,NTTドコモがWireless Power Consortium(WPC)の規格に準拠したシステムの試作品を出展したことである。WPCは2010年7月23日に,スマートフォンやデジタル・カメラなど出力5W以下の機器に向けた標準規格の策定を完了しており,対応製品の登場が待たれている状況だ。

 NTTドコモが試作した携帯電話機は,既存の機種の充電回路を改良したものである。専用の電池パックを取り付けることで,電磁誘導方式でのワイヤレス給電が可能になる。給電パッドに携帯電話機を置くと,給電パッド内の送電コイルが携帯電話機の位置まで移動して給電する仕組み。給電パッド上に複数の携帯電話機を置いた場合は,先に置いた端末から順番に充電する。伝送効率は「コイル間で95%以上。総合効率でも70~80%」(同社の説明員)と高い。

 電池パックと給電パッドは三洋電機製である。同社は,WPCの創設メンバーとして標準規格の策定にかかわってきた。既存の2次電池の外形寸法に受電コイルを収めたため,搭載できる電池の容量は一般的な電池パックに比べて10%ほど小さい。一方の給電パッドは,送電コイルの駆動に厚さ10mmほどのステッピング・モータを用いており,これ以上の薄型化は難しいという。

 このほか,パナソニック電工が厚さ0.5mmと薄い電磁誘導方式向け受電コイルの新商品を展示した。2011年3月末に発売予定である。伝送効率はコイル間で90%,総合効率は約70%という。展示パネルの適用機器欄には,従来品にはなかった携帯電話機や携帯型ゲーム機などが追加されていた。

 ただし,今回の新製品はパナソニック電工の独自仕様に基づいている。WPCにはパナソニックとして2010年夏ごろに加わったばかりであり,WPC規格に対応したシステムの開発は検討中とした。