前回触れた国務院発布の「戦略的新興産業の育成と発展を加速することに関する決定」では、「省エネ環境」「新世代情報技術」「バイオ」「最先端機械設備」「新エネルギー」「新材料」「新エネルギー自動車」の7つの産業が戦略的新興産業として指定されている。この中でカラー・テレビなどの映像機器を中心とする“電子視像産業”が関係する項目は、新世代情報技術の分野に入る。次世代通信ネットワーク「三網融合(通信、放送、インターネットの融合)やクラウド・コンピューティングをはじめとする次世代ネットワークに交じって「新型FPD」もテーマに挙がっている。 今後の第6世代以降の“高世代”液晶パネル生産ライン建設などへの支援も含まれる。

 この国務院発布の指針は、FPD産業の一段上のレベル、すなわち国全体の方針である。しかし、他の産業を含めて、中国ハイテク産業の今後を知る上で重要な内容を多く含んでおり、FPD産業の今後を理解するためにも重要な情報である。今回は、この指針の全体像を解説する。

戦略的新興産業の位置付け

 戦略的新興産業とは,重大技術のブレークスルーと需要の拡大に基づき、経済・社会全般の長期的発展を牽引する産業である。知識・技術の集約性、物的資源の低消費性、高度の成長性、良好な総合効果を備える産業でもある。戦略的新興産業の育成と発展を加速させることは、“中国現代化建設”において戦略的な意味がある。

 機会を逃がさず、創新発展を徹底、リーディング産業と中堅産業を目指し、戦略的産業の育成と発展を加速させる。戦略的新興産業の特徴に基づいて、中国の事情と科学・産業の基礎を踏まえて、「省エネ・環境保護産業」「新世代情報技術産業」「バイオ産業」「ハイエンド設備製造産業」「新エネルギー産業」「新素材産業」「新エネルギー自動車産業」を重点的に育成・発展させる。

戦略的新興産業の分類は以下の7分野になる

(1)省エネ・環境保護産業:
 高効率省エネ技術の設備および製品を重点として開発・普及を図り、重要分野のコア技術を実用化して全体のレベルアップを図る。資源リサイクルのコアとなる共同技術の開発と産業化モデル構築を加速し、資源の総合利用とリサイクル産業のレベルを向上する。先進的な環境保護技術を用いた設備および製品を普及させ、汚染の防止・除去レベルを高める。上市された省エネ・環境保護サービス体系の立ち上げを推進する。先端技術に依存する中古商品の回収・利用体系の立ち上げ、石炭クリーン利用、海水総合利用を積極的に推進する。

(2)新世代情報技術産業:
 通信インフラ建設を加速し、次世代モバイル通信、次世代インターネットの核となる設備とスマート端末の研究開発および産業化を進める。三網融合(通信、放送、インターネットの融合)の発展を加速させ、インターネット、クラウド・コンピューティングの研究開発と応用を推進する。集積回路、新型ディスプレイ、ハイエンド・ソフトウエア、ハイエンド・サーバーなどの核となる基礎産業の発展を重点的に推し進める。ソフト・サービス、インターネット付加価値サービスなどの情報サービス能力を高め、重要な基礎施設のスマート化を加速し、バーチャル技術、コンテンツ産業の成長を推進する。

(3)バイオ産業:
 重大疫病防止・治療用のバイオ技術薬品、新型ワクチンと診断用医薬品、化学薬品、現代漢方などの創新薬品品種、バイオ薬品産業の水準を向上する。先端医療設備、医学用材料などのバイオ医学製造製品の開発と産業化を加速させ、規模拡大と発展を推進する。バイオ育種産業の育成に注力し、クリーン農業用バイオ製品を積極的に普及させ、バイオ農業の発展を促進する。バイオ製造のコア技術の開発およびモデル化と応用、海洋バイオ技術および製品の研究開発と産業化を加速する。