ノートPCの電池を流用
EVの新たな標準を作り出そうというシムドライブの壮大な挑戦とは対照的なのが、パナソニックの戦略である。現在、車載用Liイオン2次電池のコストは 高く、生産量も限られている。そこで、既に生産量が多く、コストもこなれているノートPC用の電池をEVに流用することで、現在のEV用電池の半分程度ま でコストを下げてしまおうというのだ。つまり、別の分野で既に使われている規格をEVに持ち込んで低コストを武器に標準化しようという戦略である。
同社は2009年10月に開催された電機・電子機器関連の展示会「CEATEC JAPAN」で、ノートPC用電池「18650」を140本搭載したEV用の電池モジュールを公開した(図6)。このモジュールを多数組み合わせることで EVの電池として使う。国内の大手自動車メーカーから新興国の自動車メーカーまで約20社が興味を示しているという。
18650は、直径18mm×高さ65mmの円筒形電池を指す。世界のノートPCが18650を採用しており、事実上のデファクトスタンダードだ。メー カーによってエネルギ密度などの性能は異なるが、形状が決まっているため、世界の電池メーカーが参入しており、性能は向上しつつも、価格は下がっている。 現在民生向けに普及している18650は、容量が2.2Ahで、市場価格は1本200円程度。ノートPCでの使用量は1台当たり6~10本程度だが、EV では1台当たり数千本を搭載する。
パナソニックは、2011年からEV向けに18650の供給を開始する。EVベンチャーの米Tesla Motors社が2012年初めに発売する量産型セダン「Model S」(モデルS)向けだ(図7)。「コストと信頼性の両方でパナソニックを選んだ。コストだけで見れば韓国メーカーの方が安いが、EVには信頼性が求めら れる」(Tesla社)。同社は2008年にEVスポーツカーの「Roadster」を発売しているが生産台数は年産1000台程度にとどまっていた(図 8)。
4ドアセダンのModel Sでは年産2万台と大幅に増やす。18650を採用するのは、Tesla社のようなベンチャー企業だけではない。ドイツDaimler社は「smart ed」に搭載し、2009年末から欧州で実験を進めている(図9)。