まず,第1のポイントである相互接続性については,先に述べた通りだ。第2のポイントであるリーダー/ライターとは,非接触ICタグやカードに対してデータを書き込んだり,そこからデータを読み出したりする機能である。この機能に対応したことで,携帯電話機間でNFCを介して情報を交換することなどができるようになる(図4注2)

注2) NFCを使った携帯電話機同士の通信 は,片方のリーダー/ライターが一方のメモリ 領域を書き換えたり,読み取ったりすることで 行う。つまり,NFCで2台の携帯電話機を通 信させようとした場合,少なくともどちらか一 方が,リーダー/ライターになる必要がある。

図4 スマートフォンがリーダー/ライターになる意味
NFCのリーダー/ライターがスマートフォンに入ることで,スマートフォン自体が決済端末になる。また,手元にいつもリーダー/ライターがあることで,多様な場所に非接触ICタグが貼られる可能性が高まる。
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 第3のポイントである,オープンなソフトウエア開発環境とグローバルなアプリ配布システムによって,世界中のアプリ開発者が魅力的なNFC対応のアプリを開発し,これを世界に向けて容易に流通させることができる。

 オープンな開発環境とは,例えばAndroidのように,OSで用意されるさまざまな機能を駆使して開発者が自由にアプリを開発できることを指す。一方で,携帯電話事業者から認定を受けていない個人や組織がFeliCa搭載携帯電話機でアプリ開発を手掛ける場合,電話帳やGPSの位置情報を取得できないなどの制限があった注3)

注3) NTTドコモは2010年11月からiアプリ 向けのアプリ・マーケットを開始した。これに 合わせて,非公式のiアプリに課していた制限 を緩和している。

図5 Android 2.3のNFCに対するユーザー・インタフェース
Android 2.3およびNFCを搭載したスマートフォンをタグに重ねると,そのデータの処理が可能なアプリの一覧が表示され,その中から処理するアプリを選択する仕組みになっている。

 グローバルなアプリ配布システムとしてはGoogle社の「Android Market」がある。ここでは,開発したNFC向けアプリを簡単な操作で世界中に配布できる。それが,これまでのFeliCa搭載携帯電話機などの場合,アプリは携帯電話事業者ごとに作り分けなければならず,Android Marketのようなアプリ配布システムも整っていなかったのである。

 第4のポイントが,ユーザー・インタフェースである。Androidの場合,NFCの非接触ICカードやタグにスマートフォンをかざすと,関連したアプリがすぐに立ち上がる仕様になっている(前ページの図5)。このため,通信開始や非接触ICタグの読み出し開始などがスムーズにできる。

 FeliCa搭載携帯電話機では,非接触ICカード以外の機能を実現するための手順が煩雑で,ユーザーの使い勝手に課題があった。