ケディカの顧客は東北地方に拠点を構える企業が多く、仕事量は震災前の約8割になった。「落ち込みの度合いは、(2008年秋の)リーマンショックよりも大きい。仕事が1回なくなってしまうと、再び帰ってこなくなることを懸念している」(同社の三浦氏)。

 ただし、仕事量が減った主な理由は顧客の生産活動の停滞であり、同社が操業停止していたことで失った仕事はない。同社は、震災後から復旧状況をこまめにWebサイト上で公表することで、「当分操業できないのではないか」といった不安を顧客に抱かせないよう配慮してきた。具体的には、震災発生から2011年4月11日まで計6回のプレスリリースを出している。

 同社の三浦氏が心配しているのは、同じく被災した中小企業の今後だ。特に、太平洋沿岸地域の被害は大きい。「知り合いの企業では、既に自己破産したところもある。固定費削減のため、事業を本格的に再開するまで全社員をいったん解雇せざるを得ないという話も聞く。それでも後継者がいれば再起を図るだろうが、後継者がいない企業では復旧する気力もわかず、そのまま廃業してしまうのではないか」(三浦氏)。

 ケディカの話に戻ると、今後めっきの原料である非鉄金属の調達が難しくなる恐れがありそうだ。具体的には、青森県から調達していた亜鉛や、福島県から調達していた銅などが不足気味で、オーストラリアなどから調達する動きも出てきた。

 夏場に予想される電力不足も、不安材料だ。電力供給が止まるとめっき液が冷えてしまうので、再び温まるまでにかなりの時間がかかる。計画停電のような形は避けたいのが実情だ。

事業所の入り口に「がんばれ、日本。がんばれ、東北。」と書かれたポスターを掲示している。同社が独自に作成したものだという。

 同社の場合、以前から電力使用量の削減や電力以外のエネルギ利用も進めてきたため、電力量を大幅に減らすのも難しいという。「最も手っ取り早いのは、操業時間を夜間にずらすこと。当社は、半導体産業向けの売り上げが3割近くを占めていることもあって、夜間勤務の管理ノウハウは持っている。ピークをずらすという形で貢献できるのではないか」(三浦氏)。調達難に電力不足と不安の種は少なくないが、顧客の生産活動の再開に向けて、全力で対応していく方針だ。