液体や電力を扱うプラントでは,超純水プラントでイオン交換樹脂が入った重さ約100kgのステンレス容器(デミナー)が転倒した(図9)。廃水処理プラントでは大規模な薬液タンクの配管に亀裂が入った。ただし,防壁堤があるので,その中での薬液漏れに抑えられた。変電設備や電源ケーブル・ラックなども破損が生じた。

図8 ●石英チューブが破損
キャスタ付きの保管棚は被害が少なかった。これは兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)時の報告とは異なる。三洋電機のデータ。
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図9●イオン交換樹脂が転倒
超純水プラントでイオン交換樹脂が入った重さ約100kg のステンレス容器(デミナー)が転倒した。三洋電機のデータ。。
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地震後の対策● リスク分散を推進

 地震後の対策は大きく七つに分かれる。(1)生産拠点におけるリスク分散の徹底,(2)新潟工場の生産ライン再編,(3)装置固定方法の見直し,(4)シリンダ・キャビネットの強化,(5)塩ビ・ダクトのつり方変更,(6)薬品タンク配管の対策,(7)天井の補強である注6)

注6)このほか,地震保険に関しては,三洋電機グループ全体として,最も費用対効果が高くなるように,スケール・メリットを生かせる形で地震保険契約を締結したという。保険の詳細に関しては非公開とする。

600gal対応の固定金具を導入

 (1)リスク分散に関しては,新潟,群馬,岐阜の3工場で生産能力を融通できるようにした(図10)。これまでも工場は上記3拠点に分かれていたが,それぞれの工場が独立採算制であり,各工場が効率を追求した結果,プロセスの互換性はほとんど失われていた。震災後は3工場を統合会社の三洋半導体製造にまとめ,プロセスの互換性を確保した。このほか,国内LSIメーカーを外部ファブとして利用する体制も,これまで通り継続している。今後,各工場で対応できるプロセスの種類を増やす計画であり,代替生産への対応力を高めていく注7)

注7)例えば,新潟工場ではMOS,バイポーラ,バイ-CMOSに加えて,ディスクリートやCCDの生産を検討している。MOSはすでに4拠点体制を確立しているが,今後,ディスクリートやバイポーラは2拠点を3拠点へ,バイ-CMOSやCCDは1拠点を3拠点へ増やしていく。

図10 ●生産拠点のリスク分散を徹底
新潟,群馬,岐阜の3 工場で生産能力を融通できるようにした。これまでは各工場が独立採算制であり,プロセスの互換性はほとんど失われていた。三洋電機のデータ。
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