「ゼロ・エミッションの時代をリードし,自動車産業の新たな時代を切り開く。『リーフ』はその第一歩だ」。2009年8月3日,横浜市に移転した新本社の オープニング・セレモニーにおいて,日産自動車社長兼CEOのCarlos Ghosn(カルロス・ゴーン)氏は,リーフと名付けた電気自動車をこう紹介した(図1)。

タイトル
図1●電気自動車「リーフ」と日産自動車のCarlos Ghosn氏
量販タイプの電気自動車として専用設計した。2010年末に発売する。
写真:菅野勝男

 リーフは,量産型の電気自動車として専用に設計した5ドア(ハッチバック)タイプのコンパクトカー。同社は2010年末に日本や北米,欧州市場でこの車 両を発売する計画で,まずは日本の追浜工場で5万台/年の生産に踏み切る。続いて,2012年には米国テネシー州にあるSmyrna工場において15万台 /年の生産を始める予定だ。つまり,数年後に日産自動車は,世界で合計20万台/年規模の電気自動車の大量生産に打って出ることになる。

「2020年に10%」に拡大

 量販タイプの電気自動車の発表が,このところ相次いでいる()。先陣を切ったのは三菱自動車。日産自動車よりも1年早く,2009年7月下旬に「i- MiEV」を市場投入した。軽自動車「i」をベースに開発した車両で,まずは1400台の限定生産によって法人や自治体を中心にリース販売する方式を採っ た。価格は459万9000円(税込み)と高額だが,すぐに売り切れた。2010年4月からは個人向けの販売にも踏み切り,生産量を5000台/年に増や す。それに合わせて「価格を安くする」(同社)考えだ*1。

*1 2009年7月31日から個人向け販売の購入希望の受け付けを開始した。

表●発売,または発売が予定されている電気自動車
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 三菱自動車と同じく7月下旬に,富士重工業も軽自動車「ステラ」ベースの電気自動車「スバル プラグイン ステラ」を発売。価格は472万5000円(税込み)で台数は170台程度だが,「電気自動車時代の到来」を世間に印象付けた。

 日産自動車のGhosn氏は,現行のハイブリッド車を「世界的にはニッチにすぎない」と考え,世界の自動車販売台数に占める電気自動車の比率が 「2020年に10%になる可能性がある」と指摘する。この予測を踏まえて,同氏は電気自動車の量産体制を急ピッチで整えているのだ。A.T.カーニー(本社東京)の予測では,2020年の世界の自動車販売台数は8500万台。従って,10%なら850万台の電気自動車の市場が生まれることにな る*2

*2 A.T.カーニーの予測では,電気自動車の販売台数の比率は2020年に全世界の1%。よって,約85万台にとどまる。ただし,プラグイン・ハイブ リッド車を含めるとその比率は8~9%に高まり,約600万~770万台となる。電気自動車とプラグイン・ハイブリッド車の比率は2次電池の進化次第で変 化し,9%のすべてを電気自動車が占める可能性もあるという。また,富士経済(本社東京)の予測では,電気自動車の世界生産台数は2020年に13.5万 台。100万台市場になるのは2030年以降とみる。

 三菱自動車社長の益子修氏は「2020年までに当社の生産台数の20%を電気自動車,およびプラグイン・ハイブリッド車にする」と宣言した。同社が言う プラグイン・ハイブリッド車とは,発電用のエンジンを積むシリーズ・ハイブリッド車*3に,外部から充電もできるようにした電気自動車のことだ。

*3 シリーズ・ハイブリッド車 エンジンを発電機としてのみ使い,モータで駆動する車両。エネルギ効率を高めるために,燃費効率が優れる回転数でエンジンを回して発電し,2次電池に充電する。

いつまでハイブリッド車か