工作機械/測定器: お客から強力なライバルへ

 「今は精度の安定性などに課題があるとはいえ,正直,脅威だ」(日本の工作機械メーカー)。日本の工作機械メーカーや測定器メーカーにとってHon Haiグループは,足を向けて寝られないと言えるほどの,最大級の買い手である。同時に同グループは,金型の製作に使う高速ミリング装置やCNC非接触式3次元形状測定器,各種工作機械の周辺装置などを内製するライバルでもある(図9)。

タイトル
図9 いつまでもいいお客ではない
Hon Haiグループは,日本メーカーの製造装置や測定器を大量に購入している(a)。しかし,そのコストを抑制しようと,内製化も進めている(b)。

 しかも,一部の装置は2010年から米国メーカーのブランド名を付け,外販され始めている。競合となった日本メーカーの社員は言う。「外販品の仕様値は,我々と同じで格段に安い。しかも,複数メーカー品のいいとこ取りと言える特徴や,作業ニーズに即したソフトウエアまで備えている」。

 台湾や中国で,工作機械/測定器の技術サポートやマーケティングを担う社員の中では,次のような意見が出始めている。「サプライチェーンの川上だから日本メーカーがこれからも優位なんて思えない。なぜならHon Haiグループの生産技術者の中には,こちらがうなるほど優秀な人物がいる。莫大な量を造る現場も豊富にある。工作機械や測定器の基幹部品だって流通している。沢山買ってくれる今のうちに,対策を進めないと危険だ」。

半導体: 後工程に2011年参入

 Hon Haiグループの郭氏は従来,「半導体は初期投資がかさみすぎるので手掛けたくない」という考えを持っていた。しかし,同様な性質を持つ液晶パネル会社を買収したように,考え方を一部変えたようだ。具体的には, 2011年から半導体の後工程の製造を請け負う計画だ。

 渤海湾に面した中国河北省秦皇島市に設けたグループ企業,宏啟勝精密電子(秦皇島)社がCSP(chip size package)とフリップチップCSPを製造する。これらは「スマートフォン向けと考えられる。現在,競合となる後工程メーカーから台湾人や韓国人を積極的に採用中」(半導体パッケージ用部材の販売担当者)という。宏啟勝精密電子の資本金は32億台湾ドル(約86億円)で,Hon Haiグループの持ち株比率は42%である。