カスタム部品を多用  

 薄型・軽量化に向けたVAIO Xの並々ならぬ「気合い」は,こうしたカスタム部品の多用に表れる。例えば,外部インタフェースのコネクタは,すべてカスタム品だ(図5)。汎用のコネクタだと高さがありすぎるからだ。

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図5 VAIO X専用のコネクタを採用
USBコネクタ(上左)やディスプレイ・コネクタ,Ethernetコネクタ(上右)は,すべて独自の部品を採用している。下は通常部品との比較。高さだけでなく,外に見える部分でもあるので外観的にきれいなものにしたという。

 例えばEthernetのプラグだけで高さが8.35mmあるので,コネクタの穴は9.37mmが必要とされる。その周囲に配線やシールドなどがあるため,通常のコネクタだと高さが13.9mmを超える。そこで,下側が開く形のコネクタを採用した。  また,ディスプレイ・コネクタは裏面が筐体と連続的に連なるように配置した。すなわち,底面から見るとコネクタが外に露出している。「汎用品のコネクタはこうした個所が意外にきれいではない。寸法だけでなく,こうした部分の見栄えからしても,カスタム部品を採用する必要があった」(ソニーの林氏)。

 メイン基板に搭載された部品を見ると,基板の面積を小さくするための工夫が散見された。これまでパソコンにはあまり使われてこなかった部品を用いて基板の省面積化を図っている(図6)。例えばフェライト系のインダクタとして,樹脂でシールドした品種をいくつか使っている。「パソコンでこの種の部品を使っているのは初めて見た」(部品メーカーの技術者)。磁性材料でシールドする品種に比べ小型で,その分基板を小さくできる。

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図6 パソコンではあまり使われてこなかった部品を採用
パソコンではフェライト系のインダクタは通常,磁性材料でシールドする部品を使うことが多いが,VAIO Xでは樹脂でシールドした部品も使っている。パソコンでは珍しいという。また,端子数が4の貫通コンデンサを使うことで,マイクロプロセサ周辺のコンデンサ数を減らしている。

 加えて,貫通コンデンサを採用することによって,コンデンサの数を減らした。「パッと見た感じ,コンデンサ数がかなり少ない。通常のパソコンでは小さなコンデンサを大量に置くことが一般的だが,VAIO Xでは貫通コンデンサやインダクタンスの小さいポリマ型のコンデンサを使うことで,少数で済むような設計になっている」(部品メーカーの技術者)。

 このような部品の採用方針からも,薄型・軽量化への熱い思いを見て取れる。設計の初期段階から製造部門と協力し複雑な設計を製造可能にしたことや,MacBook Airとは異なり電池を交換可能にした設計など,日本ならではのこだわりが感じられた。

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