写真1 拝堂壁面上部の柱の当たりの様子。トランスを設置している。日経エレクトロニクスが撮影
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 灯籠の外部を変更することはご法度だったと,第2回で紹介した。従来と変えてはいけないことは,灯籠の重さについてもいえる。灯籠の光源をLEDに変更しても,灯籠の重さを変えてはいけない。灯籠は天井部から吊り下げており,重さが変わってしまうと拝堂の柱などに加わる力が変わってしまう。慈尊院は世界遺産。補強工事などはそう簡単には許可が出ない。

 実際に,白色LEDを実装した光源部の重さは15g程度しかない。白熱電球を使っていたころの重さ(白熱電球とソケット類を加えた状態)と大差ないという。軽量に仕上げることができた理由には,白色LEDを交流で点灯させていることがある。交流電源で白色LEDを点灯させる場合,ほとんどはAC-DCコンバータの電源回路を使う。だが,慈尊院の灯籠および屋外のLED照明は100Vの商用電源をトランスで14Vの交流電圧に変換し,その電圧でLEDを点灯できるように6個の白色LEDを結線しているという。

 複数個の灯籠が連なる列を複数まとめて,そこにトランスで変換した14Vの交流電力を供給する。灯籠ごとにトランスを設けているわけではない。トランスは拝堂壁面の天井部分にある柱の上に設置している。拝堂内にはトランスを数個使っているようだ。

大事な場所だからこそ,交流を使いたい

 灯籠内のLEDを交流で光らせるのは,古い木造の建築物だからこその配慮もあるという。「直流でLEDを点灯させたとき,アーク放電が生じた場合を考えると,火災につながる危険性がある。交流であれば,アーク放電は止まる。」(スリーフォース 代表取締役の上嶋数章氏)からだ。