第1回:お偉いさん軍団がやってきた(上)
IT隆盛の裏で影を潜める,かつての家電王者「洗濯機」。
その洗濯機にも熾烈しれつなシェア争いは健在だ。
成熟商品であるからこそ,独自性を出し,
シェアを拡大することに格別の難しさがある。
こうしたなか,日立製作所は「イオン洗浄」と呼ぶ機能で主婦を魅了,
1999年に大ヒット商品を誕生させた。
家事のプロを虜にした,その製品の開発物語を紹介する。
東京・上野駅から急行電車で1時間半,常陸多賀と書いて「ひたちたが」と呼ばれる駅がある(図1)。常陸ひたちという名は,現在の茨城県の大部分がその昔,大化改新で生まれた「常陸国」であったことに由来する。この由緒正しき名をもつ駅の裏手に,東京ドームの7.5倍の敷地面積を誇る日立製作所多賀工場(現:日立多賀エレクトロニクス)がある。工場の裏門から駅の改札口まで歩いて30秒。朝夕は人でごった返す駅構内も,多賀工場が休みとなれば人影はまばらになり,日立製作所の業績が悪化すれば,駅前の飲食店への客足はパタリと止まる。この小さな街は多賀工場と苦楽を共にしている。
か・ま・せ・んの日
1997年6月のある日。この街に「お偉いさん軍団」がやってきた。多賀工場で毎年恒例の「家マ戦(かません)」が開かれるのだ。家マ戦とは「家電マーケティング戦略会議」の略称。出席者は日立製作所 家電グループの幹部,全国に広がる販売会社の社長など総勢70〜80人に達する。会議のトップは元 日立製作所 取締役社長の庄山悦彦氏である。同氏は当時,家電事業本部長,つまり家電グループのナンバ・ワンだった。
この,そうそうたる顔ぶれを前に,その年の夏以降に発売予定の製品を披露する会議が「家マ戦」である。「イオン洗浄」洗濯機の開発チームも,この日を目標に,着々と準備を進めてきた。あれから2年をかけて。そう,思い起こせば1995年秋,すべてはあの会議から始まった。
本当にそれでいいの?
「次の議題は,再来年発売の製品についてです。では,商品企画部の方から,まずはお願いします」
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