IT 隆盛の裏で影を潜める,かつての家電王者「洗濯機」。 その洗濯機にも熾烈(しれつ)なシェア争いは健在だ。成熟商品であるからこそ,独自性を出し, シェアを拡大することに格別の難しさがある。こうしたなか,日立製作所は「イオン洗浄」と呼ぶ機能で主婦を魅了, 1999年に大ヒット商品を誕生させた。家事のプロを虜にした,その製品の開発物語を紹介する。
「イオン洗浄」洗濯機の開発
目次
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最終回:いやいや今日はみなさんおそろいで(下)
1999年5月。発売まであと3カ月。しかし,なぜ逆止弁がうまく機能しないのか,いまだに原因はつかめないままだった。さらに悪いことに,大杉氏の元には駆動部分の担当チームからも耳を疑うような報告が入る。この期に及んで「洗濯槽が回らない」と言い出したのだ。
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第7回:いやいや今日はみなさんおそろいで(上)
日立製作所が自信をもって世に送り出した初代イオン洗浄洗濯機は,松下電器産業の遠心力洗濯機の前に苦戦を強いられていた。販売不振の原因として,営業部隊から真っ先に指摘されたのは「塩」。開発チームは,名誉挽ばん回かいを期し2代目イオン洗浄洗濯機の開発に取りかかるが…。
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第6回:いきなり遠心力に負けた(下)
かくして森川氏の嵐のような日々が始まった。「CM,カタログ,新聞広告,店頭ポップ,すべてをとにかく作り変えろ。洗浄力を前面に出せ」。販促活動を仕切り直すよう命令を下したのは電化機器事業部長の木下弘氏。木下部長といえば,あのシェイク式イオン洗浄洗濯機の製品化を中止した人物である。今回も,判断はすこぶる…
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第5回:いきなり遠心力に負けた(上)
「今年の日立さんのはすごいですなぁ」販売店との商談会で,近年まれに見る評価を受けた初代イオン洗浄洗濯機。当然,開発チームは自信に満ち溢れて1998年7月7日の発売を迎えた。ところが…。「あっ,森川さん,お久しぶりです。今日から復帰ですね」「おはよう。いろいろ心配かけたけどまたよろしく。早速なんだけど…
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第4回:そんなことやらせちゃっていいの?(下)
「俺はしょうがないと思うよ。シェイクシェイクじゃなぁ」。「そうかもね。コンパクト8kgがあるし,イオン洗浄が消えてもなんとかなるだろう」。「コンパクト8kgって,8kgの洗濯物が一気に洗えるけど本体はこんなにコンパクト,ってやつだっけ?」
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第3回:そんなことやらせちゃっていいの?(上)
「スゲー,落ちてるよ」初の洗濯実験で,思わず小池氏が歓声を上げるほどの効果を発揮したイオン洗浄機能。開発チームは,この日から2年がかりで試作機を完成させた。だが,発売3カ月前,最終会議で会社幹部から痛烈な批判を浴びる。シャカ,シャカ。シャカ,シャカ。火種は,この会議の席上での,あるデモにあった。
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第2回:お偉いさん軍団がやってきた(下)
効果は確認した。でも,実際に軟水を洗濯に使うにはどうしたらいいのだろうか。ヨーロッパなどでは家庭でも軟水機を設置している。だがそれは,とても洗濯機に組み込めるようなものではない。軟水機だけの大きさが,洗濯機ほどもあるのだ。こんなものを洗濯機のどこに押し込もうというのか。考えるだけで気が遠くなる。
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第1回:お偉いさん軍団がやってきた(上)
IT隆盛の裏で影を潜める,かつての家電王者「洗濯機」。その洗濯機にも熾烈しれつなシェア争いは健在だ。成熟商品であるからこそ,独自性を出し,シェアを拡大することに格別の難しさがある。こうしたなか,日立製作所は「イオン洗浄」と呼ぶ機能で主婦を魅了,1999年に大ヒット商品を誕生させた。家事のプロを虜にし…