液晶に遠く及ばないカラー

 こうした状況の中,カラー電子ペーパーは,電子書籍市場に食 い込んでいけるのか,それともいけないのか。間違いないのは,液晶パネルと比較した上での評価を余儀なくされることだ。その評価のポイントは,(a)カ ラーの品質,(b)コスト,(c)軽さ・薄さ,(d)消費電力,といった項目の優劣のバランスを,市場がどのように判断するのかである。このうち(a)と (b)は液晶パネルの方が優れる点,(c)と(d)は電子ペーパーの方が優れる点だ。つまり,電子書籍のサービス事業者や機器メーカーが,どこにフォーカスを当てて事業を展開し,何をウリにしたいのかなどによって,カラー電子ペーパーを採用するかどうかを決めることになるだろう。

図3 市場は表示性能をどう評価するか
図3 市場は表示性能をどう評価するか
カラー電子ペーパーの色再現範囲は一般に,透過型液晶パネルに比べて大きく劣る(a)。反射型液晶パネルに比べると紙の印刷物に近い見栄えではあるが,一般にはカラー化することでモノクロ電子ペーパーよりも反射率やコントラスト比が悪くなる(b)。(図:(a)はリコーの資料を基に本誌が作成)

 それでは(a)~(d)の現状を順に見ていこう。まず(a)のカラーの品質に関しては,少なくともここ数年の間に実用化される電子ペーパーにおいては,液晶パネルに遠く及ばない。もちろん方式によって細かな違いはあるが,大まかには反射型である電子ペーパーが既存の技術で実現できる色再現範囲は,バックライトを利用する透過型の液晶パネルに比べて大きく劣る(図3(a))。しかも一般には,カラー化することで,文字の読みやすさを決めるコントラスト比や反射率といった指標が,モノクロ電子ペーパーよりも悪くなってしまう(図3(b))。

 (b)のコストについては,E Ink社の電子ペーパーを例に取れば,6型のモノクロ品で55~60米ドルとされる。カラー品の場合,少なくともここにカラー・フィルタを追加する分のコスト増が見込まれる。これに対して量産規模がケタ違いに大きい液晶パネルのコストは,例えば7型の場合で10~15米ドル程度とかなり安い。