日産自動車が2010年度に5万台規模で電気自動車(EV)の量産を開始する。 世界的に強まる環境規制への対応と、Liイオン2次電池技術の性能向上がEV実用化の背景にある。 日産はEVの投入で先行することで、トヨタ自動車やホンダを一気に引き離す作戦だ。 しかしEVには依然として、高コスト、短い航続距離、容易な新規参入という三つのリスクがある。 電池のコストをどこまで抑えられるかで、EVをチャンスにできるか、リスクになるかが決まる。

 日産自動車が、EVで本格的な攻勢に出た。「2020年には世界の自動車市場の1割、約600万台が電気自動車になる。そのころ当社はEV市場のリーダーになっている」(同社CEOのCarlos Ghosn氏)-2009年8月の電気自動車(EV)「リーフ」の発表会で、Ghosn氏が発言した市場予測は、業界関係者に驚きを与えた(図1)。

図1 日産自動車の「リーフ」
2010年度に日米欧で発売する。Liイオン2次電池を採用し、航続距離は160km(LA4モード)以上。

 野村総合研究所の試算では、世界のEV市場は2015年で約50万台(図2)。「2020年の見通しは不確定だが150万台程度」(野村総合研究所上級コンサルタントの風間智英氏)にとどまると見る。富士キメラ総研の調査では、2015年で20万2000台、2020年で44万5000台とさらに控えめ。EV市場の予測データには、調査機関ごとに大きな開きがあるが、Ghosn氏の強気の見通しはEV市場を“大きなチャンス”と捉えていることの表れといえるだろう。

図2 EVの市場予測
2015年で53万台程度と予測する。