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最終回:二元表を用途の絞り込みに活用

富岡 恒憲=日経ものづくり
2010/12/02 00:00
出典:日経ものづくり、2010年10月号 、pp.75-77 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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[図1]第5世代バルブプロジェクトで開発した電磁弁「INPACT V K2」シリーズ
[図1]第5世代バルブプロジェクトで開発した電磁弁「INPACT V K2」シリーズ
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[図2]第5世代バルブプロジェクトで用いた新しい商品企画・開発プロセス。薄い灰色(TRIZなど)で示した手法やツールを追加した。濃い水色の部分〔TOC(思考プロセス)など〕は以前から実施している。灰色がかった水色(顧客要求仕様とのミスマッチなど)は従来の課題。薄い水色(ナレッジマネジメントなど)は、将来の追加を目指しているもの。
[図2]第5世代バルブプロジェクトで用いた新しい商品企画・開発プロセス。薄い灰色(TRIZなど)で示した手法やツールを追加した。濃い水色の部分〔TOC(思考プロセス)など〕は以前から実施している。灰色がかった水色(顧客要求仕様とのミスマッチなど)は従来の課題。薄い水色(ナレッジマネジメントなど)は、将来の追加を目指しているもの。
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 QFD/TRIZ/タグチメソッドといった3つの手法を組み込んだ新しい商品企画・開発プロセスを目指し始めたコガネイ。ただ、そうしたプロセスの適用を模索している過程で、不十分なところも判明する。例えば、QFDを導入しても、要求品質と品質特性の二元表による検討(品質─機能展開)だけでは重視すべき品質特性を絞り込みにくく、商品企画が総花的なものになりがちという欠点があった。

用途を絞り、脱・総花的企画

 そこで、コガネイが講じたのが、顧客ニーズである要求品質と技術的な特性である品質特性の関連を調べる前に、顧客のセグメントごとにどのようなニーズがあるのかを調べることだ。すなわち、顧客の用途と要求品質の二元表を作成(用途─品質展開)し、あるセグメントの顧客に特化した場合にどのような要求品質が重視されるかを明らかにすることだった。これにより、特徴を持った商品の企画が可能となった。

 加えて、QFDによる検討で実際に目標仕様を決定する際に、狩野メソッドを考慮するようにした点も特徴的だ。狩野メソッドでは、要求品質の中には(1)当たり前品質、(2)一元的品質、(3)魅力品質、の3種類があるという立場を取る。当たり前品質とは、要求を達成していて当たり前で、達成していなければクレームの対象となる品質のこと。一元的品質とは、要求の達成度が上がるにつれて顧客満足度も上がる品質を指す。最後の魅力品質とは、顧客がそこまでは無理だろうと我慢していたり要求をあきらめていたりする品質である。

 同社は、この魅力品質に着目。既存の品質特性でも、顧客があきらめているレベルを実現できれば商品に新たな魅力を付加できるはずと信じて、目標仕様を決める際の参考にしている。

営業が一緒に企画

 第5世代バルブプロジェクトでは、実際にこうした手法を活用して、大流量(同社従来品の3倍)としながらも、応答速度が速く(同2倍以上)、消費電力が少なく(同1/2以下)、従来品並みに薄いという電磁弁「INPACT V K2」シリーズを開発した(図1)。不良品だけを圧縮空気で吹き飛ばすようなワークの選別作業のほか、部品洗浄や成形品の取り出しなどで使われる間欠ブロー(間欠的に圧縮空気を吹き付けること)などに用途を絞って企画した商品だ。図2は、その商品企画・開発プロセスの流れだ。

 用途を絞ることで、向上させるべき品質特性に優先度を付けて訴求力をアップ。そればかりか、そうした品質特性とトレードオフの関係にある他の品質特性についても、できるだけ高いレベルを維持できるように構造などを工夫し、そもそもの電磁弁としての基本性能を高めている。

 用途の絞り込みは、商品企画の初期段階で実施した。営業部と開発部が一緒になって用途─品質展開を行うことでこれを可能とした。どのような業種の顧客がどのように電磁弁を使っているか、そうした用途でどんなニーズがあるかは、いつも顧客と接している営業部が一番分かっている。そういう営業部と開発部が相談してターゲットを決めることで、特徴を出しながら顧客の琴線に響く商品を企画することが可能になるのだ。しかも、この用途─品質展開の結果は、その後の販売戦略の立案にも生かすことができる。

 電磁弁としての基本性能の向上は、QFDによる品質─機能展開、TRIZ、タグチメソッドによって達成した。INPACT V K2シリーズでは、品質─機能展開により、目標仕様を高速応答、大流量、低消費電力、薄型、長寿命に設定。ここでTRIZのFAAを活用して、電磁弁の動作の詳細を分析した。その結果、「応答速度を上げるために吸引力を増すと消費電力が増える」など、上記目標仕様に潜む技術的な矛盾を抽出でき、さらに、タグチメソッドによる設計の最適化で必要となる電磁弁の基本機能についても明らかにできた。

 FAAで抽出した技術的な矛盾に対しては、TRIZの「40の発明原理」を適用した。これにより、矛盾解決のためのアイデアを大量に出して、それらの中から有効そうなものを取捨選択し、必要に応じてそれらを組み合わせることで最終的な実現方法を決定した。その一例が、新構造のソレノイドである。ソレノイドは、電磁弁の“エンジン”となる重要な部品だ。

 新型ソレノイドの特徴は、(1)コイルを2分割にした、(2)コアをU字形にした、(3)弁を開閉する可動子を平板型にしてU字形のコアと対向させた、(4)コアに薄い方向性電磁鋼板を積層したものを採用した、など。こうした構造により、ソレノイドが可動子を吸引する部分の面積を従来品よりも増加させ、さらに透磁率が大きい方向性電磁鋼板を使うことで大流量化に必要なパワーを確保した。加えて、U字形のコアの採用によって磁路を従来品よりも短縮、消費電力を低減した。応答性が高まったのは、コアに薄い方向性電磁鋼板を使って渦電流損を減らしたため。渦電流損が減ると磁気回路の時定数を小さくできるため、応答性が改善した。

 新構造のソレノイドを含む同電磁弁の設計パラメータは、タグチメソッドで最適化した。これにより、同電磁弁では量産金型を試作なしで一発で造れた。今後の課題は、この新しい商品企画開発プロセスを定着させていくこと。そのために第2、第3のプロジェクトを立ち上げ、同プロセスの定着を図っていきたいとしている。

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