「特徴のある製品で不毛な吸い込み率競争に終止符を打ちたい」。
その思いから「排気が出ない」掃除機を立案した企画担当の日向氏。
技術者たちに要素技術の検討を強引にのませた。
しかし技術者たちに「要素技術的に不可能」
という結果を突き付けられてしまう。
そこで飛び出したのが,「排気が少ない」掃除機という妥協案。
技術者たちは,この原理試作に取り組むことになったのだが…。
「またやることになりました」
技術担当の山本氏と雑古氏は,大阪本社で行なわれた定例会議から帰ると早速技術者たちに説明を始めた。
「方針転換することになりましてー,えー「排気が出ない」掃除機ではなく,今度は「排気が少ない」掃除機という方向で…」
技術者たちがつぶやく。
「まだやるの?」
無理もない。この段階で,「排気が少ない掃除機」を製品化できると考えていた技術者は一人もいなかったのだから。
確かに,排気を逃がすことが許されれば,掃除機本体を若干は冷せる。モータやコード・リール部が過熱する問題は解決できるかもしれない。だが,それはあくまで机上の話である。それを製品に作り込めるかどうかは,まったくの別問題だ。
こんな試作機見たことない
そうはいっても,決まったものはしょうがない。ともかく原理試作は進めなければ。