切削技術の進歩により、微細加工に大きな変化が起きている。nm級の微細な形状や面粗さを扱う加工の中でも、0.1μm(100nm)よりも小さな「超微細・精密」な切削加工が既に可能になっており、鏡面加工が現実のものになっている。切削加工の後でみがいて精度を出すのではない。むしろ、研削よりも切削の方が平滑な面が得られる。これまでの常識が逆転しつつあるのだ。
精密さで「みがき」を逆転した 高速切削による微細加工
目次
-
第6回:焼結体でさらに微細な加工
面粗さや加工精度が100nm未満の超微細・精密加工には、前述したようにcBN焼結体やダイヤモンド焼結体が主に用いられる。微細形状の切削では切削後の仕上げが難しいため、刃先部が変化しない「減らない工具」で最後まで加工する必要がある。
-
第5回:小径工具の寿命を延ばす
微細切削用工具には、切削精度の維持と工具摩耗特性の高度化が求められている。一方で、用途を考えると、被削材は高硬度鋼から超硬合金を含むセラミックスなどの高脆性材料まで広範囲である。工具の材料は、通常のコーテッド超硬合金よりも耐摩耗特性がさらに優れる、cBN(立方晶窒化ホウ素)焼結体やダイヤモンド焼結体…
-
第4回:制御での線分近似を避ける
現在の工作機械の制御方式は、微細な形状の加工に用いるには限界がある。すなわち、工具の軌跡を短く分割し、線分で近似してNCプログラムを作成するため、加工精度を高めるとデータ量が増大し、CAMの処理に多くの時間を要することになる。NCプログラムを数値制御装置が解読するのにも時間がかかる。
-
第3回:工作機械の高精度化
高速で主軸を回転させつつ工具の摩耗を数μm(逃げ面摩耗幅)に抑え、かつ長時間の切削を可能にするには、微細形状を加工する際にも送り速度を維持し、切削時に発生する刃先への衝撃を最小限に抑えるなど、工作機械側の対策が求められる。このような試みは2002年ごろ、理化学研究所とソディックが共同開発した実験機か…
-
第2回:高速主軸で加工負荷を測定
筆者らは、小径工具を用いた高速切削中の工具の負荷特性を調べることで、その効果と有用性について検討した。3軸リニアモータ駆動、主軸回転数4万 rpmのMCに、固定具で「超高速小型エアー軸受タービンスピンドルABSF-1600」(ナカニシ)を取り付け、平面加工を行いながら回転速度変動を検知し、加工中の切…
-
第1回:急速な進歩が微細加工を可能に
微細加工は、電気電子や光、エネルギ、医療といったさまざまな分野で、製品の小型化や高機能化、省エネルギを達成する上で、共通して必要とされる技術である。発光ダイオード(LED)用レンズ生産のための金型作製、医療分野や生命科学分野の機器における微細な液体流路の形成、HDDの流体軸受部品の内径切削などが典型…