前編より続く

 単独では価格競争力が今一つ足りなくても、副産物など、ほかの方法で収支を合わせる考え方がある。

 一つはCO2の吸収装置を兼ねさせる方法である。発電所、製鉄所などから出るCO2を光合成に使う。その分排出権取引でお金が入れば、結果として燃料コストを下げられる。

 デンソーは、むしろこちらに重点を置き、「藻を燃料化する当面の目的をCO2を吸収・固定化することとした」(デンソー基礎研究所第8研究室室長の渥美欣也氏)。自動車用燃料は「長期的には期待できる」という副次的な位置付けである。

 この使い方でも、藻であることの利点は生きる。高等植物でCO2を吸収させようとすると、葉緑素に到達させるまでが大変だ。葉のそばに供給しようと配管をすることは不可能に近い。ハウス栽培にして、その中をCO2で満たすことはできるが、サトウキビやトウモロコシのハウス栽培というのはあまりないから、 CO2吸収専用の設備ということになり、ソロバンが合わない。藻ならば、水にCO2を吹き込んで細胞まで届けることができる。

 排出権以外にもお金の入り口はある。例えば、排水中の有機物を使って藻を育て、排水の処理費用を取る。

 逆に、藻を作る過程で出てくるものを売ることも考えられる。藻の成分の一部を抽出し、医薬品、健康食品など付加価値の高い成分を抽出できれば、燃料価格を下げても採算は合う。デンソーはマイクロアルジェコーポレーションを共同研究メンバーに引き入れているが、同社はもともとサプリメントの製造販売会社であり、そうしたノウハウを持っている。

開放型のレースウエイ型が本命に

 栽培する施設については様々な提案がある。周回路型のプールを作り、パドルで水を循環させる「レースウエイ型」、透明な管の中に藻を含んだ水を流す「チューブラー型」、薄い水槽を並べたような「パネル型」の3種にまとまりつつある()。

表 3種の栽培方法
表 3種の栽培方法
エネルギの生産性と手の掛からなさを比較した。