競合メーカーは,後を追う。松下電器産業が薄型コンパクト機に展開して以降,同分野のデジタル・カメラへ手ブレ補正技術を搭載する動きが各社で本格化する。2005年にはソニーが採用,2006年に入ってニコンとキヤノンがそれぞれ光学式を搭載した製品を発表した。現在では光学式だけでなく,イメージ・センサ・シフト方式や電子式など,さまざまな手ブレ補正技術が展開されている。

 松下電器産業は立ち止まることなく,今日も先へ先へと歩を進めている。2006年4月には,厚さが約40.2mmと薄い本体に,光学10倍のズーム機能を備える薄型のコンパクト機「DMC-TZ1」を製品化する。これまで積み上げてきた光学技術の結晶である。光路をプリズムで曲げる屈曲光学系と鏡筒を縮めて本体に格納する沈胴光学系を組み合わせた。

20年にわたる開発の軌跡

 そして今,カメラの最高峰に挑もうとしている。デジタル一眼レフ・カメラ市場に参入するのだ。2006年2月に開催されたカメラの総合展示会「PMA 2006 International Convention and Trade Show」では,オリンパスと共同開発中のデジタル一眼レフ・カメラを公開した。ライカ・ブランドの交換レンズを提供し,もちろん光学式の手ブレ補正機能を装備する。

 松下電器産業は,このデジタル一眼レフを同社のデジタル・カメラ向けブランド「LUMIX」シリーズとして展開する意向だ。LUMIXとは,光を意味する「Lumi」と,デジタル技術との融合を意味する「Mix」を合体させたもの。この名前には,エンジニアたちの秘めたる思いが込められている。光技術とデジタル技術の融合ミックスこそ,我々が目指すべき道である――。手ブレ補正技術をはじめ,LUMIXはまさに機械技術とエレクトロニクスが両輪となって生まれた華麗な成果となった。

20年も続く鏡筒の小型化
20年も続く鏡筒の小型化
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 振り返れば,松下電器産業における手ブレ補正技術の源泉は,20年以上前の研究者のひらめきにたどり着く。大嶋光昭が1982年にハワイ旅行に出掛け,手ブレ補正技術に関する基本的な着想を得る。そこでのアイデアを,林をはじめとするエンジニアたちがバトンを受け継ぎ,技術を成熟させて完成度を高め,応用先を広げていった。究極の技術を追い求める営みは,決して終わることなくこれからも続いていく。

―― 終わり ――