2008年2月,日立製作所は価格が50万円の「腕時計」を発売した。決して高価な宝石をちりばめたわけではなく,もちろん同社が時計事業に参入したわけでもない。確かに時刻表示の機能も備えているが,それが本来の機能では決してない。実は,この「腕時計型端末」の正体は,利用者の脈拍や皮膚温度,動きなどを24時間連続して測り続ける計測器なのである。

 使い方は簡単だ。利用者は,この端末を腕時計のように手首に装着しておくだけ。搭載されている各種センサが脈拍・皮膚温度・動きなどを計測し続け,内蔵メモリにそのデータが蓄積される。データをパソコンに無線送信すると,専用ソフトウエアによってこのデータから歩行数や活動量(消費エネルギー),睡眠時間などを推定できる。データはグラフ化され,時系列的な変化を確認することも容易である。例えば,そのグラフを頼りに,ある1日の行動を振り返ることも可能となる。

あちらこちらで芽生え始める

 この端末は,個々人の1日の行動や生体情報などを記録し続ける,いわば「ライフ・レコーダー」ともいうべきものである。ライフ・レコーダーは,利用者が意識することなく,必要なデータを自動的に取得し続けてくれる。ライフ・レコーダーが記録する各種のデータは,これまで我々が見過ごしていたさまざまな情報を教えてくれる。

 2008年に入り,このようなライフ・レコーダーをめぐる動きが,にわかに熱を帯びてきている(図1)。さまざまな企業や研究機関などが,それぞれの視点からライフ・レコーダーへの取り組みを活発化させているのである。

図1 ライフ・レコーダーは芽生えたばかり<br>2008年に入り,ライフ・レコーダーが相次いで市場に登場している。主に特定健診・特定保健指導に向けたツールとしての利用を想定したものである。しかし今後,その用途や端末の姿は大きく変わる。2009年から2012年にかけて,用途は一般消費者向けにも広がり,端末は無線機能を搭載するなど高機能化する。2013年以降には,絆創膏型の超小型端末も登場するほか,測定データを活用したコンテンツ・サービスが続々登場する。ここには,機器メーカーや電子部品メーカー,ITメーカー,コンテンツ・サービス事業者などの活躍の場が広がっている。
図1 ライフ・レコーダーは芽生えたばかり
2008年に入り,ライフ・レコーダーが相次いで市場に登場している。主に特定健診・特定保健指導に向けたツールとしての利用を想定したものである。しかし今後,その用途や端末の姿は大きく変わる。2009年から2012年にかけて,用途は一般消費者向けにも広がり,端末は無線機能を搭載するなど高機能化する。2013年以降には,絆創膏型の超小型端末も登場するほか,測定データを活用したコンテンツ・サービスが続々登場する。ここには,機器メーカーや電子部品メーカー,ITメーカー,コンテンツ・サービス事業者などの活躍の場が広がっている。
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