COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第3回:灼熱・極寒・宇宙線(上)

宇野 麻由子
2010/04/06 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2007年1月15日号 、pp.100-101 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前回から続く)
イトカワの模型
小惑星探査機「はやぶさ」と小惑星表面探査用小型ロボット「MINERVA」の目的地「イトカワ」の模型。模型でははやぶさが着地している。イトカワの外形寸法はわずか550m×298m×244m(写真:齊藤哲也)

 1回94万5000円。時間はたった4.5秒。利用時に一切制約を課さないとはいえ,岐阜県土岐市にある落下塔施設,日本無重量総合研究所が提示する値段は,「MINERVA」の開発陣にとって法外だった。

 落下塔施設は,地球上にありながらあたかも重力がないかのような状況を作り出せる実験設備である。重力がほぼゼロの小惑星「イトカワ」で移動機構が動作するかどうかを確かめるには,利用しないわけにはいかない。しかしMINERVAの開発予算は限りなく無に近い。落下塔での実験はここぞという時まで取っておきたい。それまでは,なるべくお金が掛からない方法で,どうにか代用できないか。

 1998年夏。MINERVAの開発は新たな段階に入っていた。シミュレーションでの成功を受けて,移動機構の動作を実機で確かめなければならない。ロボット製作に向けそろりと踏み出した第一歩で,開発陣はいきなり資金の壁にぶち当たった。

重力は一方向しか働かない

久保田孝氏
1998年にMINERVAの実験に加わった宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 助教授の久保田孝氏(写真:齊藤哲也)

 予算はないが,知恵はある。開発陣は重力を打ち消す仕掛けをひねり出した。移動機構を思いついた宇宙科学研究所(現・宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)の吉光徹雄らは,試作機を天井から糸でつり下げる方法を考案。吉光は,宇宙科学研究所の久保田孝とともに,実物を使って試してみた。ところが,試作機が少しでも移動すると,最初の位置に引き戻そうとする重力が,どうしても作用してしまう。

 検討の末に開発陣がたどり着いたのは,水平な面の上での運動を,鉛直方向の運動に見立てる方法だった。移動機構が実現する「飛び跳ねる」動作で重要なのは,試作機の鉛直方向の挙動である。ならば,鉛直方向の平面を90度横に倒して,水平面上の運動に変換したらどうか。水平方向の運動に限れば,重力は直接影響を及ぼさない。もちろんこれでは3次元空間内での挙動は分からないが,それでも十分役に立つ。

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