財務省の貿易統計によると,2008年の食料品(魚介類,肉類,穀物,野菜,果実)の輸入額は6兆2118億円。輸出額は4033億円しかないので,約 5兆8000億円も輸入が輸出を上回っている。この金額は,国内市場の規模と比べてどの程度の大きさなのだろうか。
農林水産省の統計によると,2007年度の食料の国内消費仕向額*1は15兆1000億円である。食料の国内生産額は約10兆円だった。統計の対象となる期間や対象品目の選び方に違いがあるため,国内市場規模と国内生産額の差(約5兆1000億円)よりも輸入超過額(約5兆8000億円)が多くなってはいるものの,おおよそ,国内市場15兆円の1/3を輸入に頼っているのが現在の日本と考えればいいだろう。
*1 国内消費仕向額 「国内生産額+輸入額-輸出額-在庫の増加額」で計算した値。畜産物および加工食品については,輸入飼料および輸入食品原料の額を国内生産額から控除して算出している。この状況を「食糧自給率」という言葉を使って表現すると,2007年度の生産額ベースの総合食料自給率は約66%となる(図1)。このところよく取り上げられる「食料自給率40%」というのは,畜産の飼料となる穀物の自給率も掛け合わせて計算するカロリーベースの総合食料自給率のことだ*2。主食用穀物の自給率(質量ベース)が約60%なのに,飼料を含む穀物全体の自給率は30%を切っていることからも,飼料用穀物の輸入依存度がいかに高いかが分かる。
*2 畜産物1kgの生産に要する穀物(トウモロコシ)の量は,牛肉で11kg,豚肉で7kgとなる。農林水産省が2005年に策定した「食料・農業・農村基本計画」では,カロリーベースの総合食料自給率を2015年度に45%,将来的には50%以上にすることを目標として掲げている。生産額ベースの総合自給率は,同年度に76%を達成することが目標だ。
確かに,人間が生きていくために不可欠な食料の海外依存度を引き下げること,つまり国内生産を増強することは,国民の安全・安心につながる。特に,日本の経済力が落ちつつある今,将来的な海外からの食料調達に対する不安は強まっているはずだ。
日本の食料自給力を強くするためには,農業や漁業の振興が不可欠だ。特に,主食であるコメや畜産用飼料となる穀物を生産する農業の役割は大きい。さらに,養殖の適用範囲が広がりつつあるものの,主には野生の動物を相手にする漁業に対して,植物を栽培して収穫するという農業のプロセスには同じ“ものづくり”として製造業に通じる部分が多い。日本のものづくりのノウハウを生かして,発展させられる可能性は大いにある。