「映像品質以外」の価値を
そんな中,CEATECで他社とはひと味違うアプローチを見せたのが,開幕前日に「CELLレグザ」を発表した東芝である(図2)。
CELLレグザの特異性は「映像品質以外」の価値にも重点を置いたことである。市場で約100万円という価格にもかかわらず,画面サイズは55型にとどめた。代わりに,全チャンネル録画機能やインターネット動画対応,快適なユーザー・インタフェースといった機能を実現してウリにしている。高い処理能力を誇る「Cell」マイクロプロセサの搭載が,これらを可能にした。
テレビはこれまで,映像品質の向上を軸に技術革新を進めてきた。PDPや液晶パネルの採用によって薄型化と大画面化を実現した。いわゆる「フルHD対応」に代表される,画素数向上や応答速度の改善,最近急速に採用が進むLEDバックライトといった技術や,先に挙げた3D対応も,映像品質の向上の系譜に属する。
そのため,映像品質に関係が薄い部材にコストを掛けない設計が,これまでのテレビでは当たり前だった。テレビのインターネット対応やユーザー・インタフェース改善がなかなか進まなかった理由の一つは,テレビに搭載されるマイクロプロセサがギリギリの処理能力しか持たなかったためである。CELLレグザはこうした殻を破り,「処理能力が余る」高価なプロセサをあえて搭載して,新たな価値を生み出そうとしている。