第1回 GSユアサ:引き合いが強く,電池の生産が追いつかない
ジーエス・ユアサ コーポレーション 沢井研氏
自社で生産するほか,他社との協業によってLiイオン2次電池事業の拡大を図るジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)。三菱自動車,三菱商事との合弁で設立したリチウムエナジー ジャパンでは電気自動車向けを,ホンダとの合弁で設立したブルーエナジーではハイブリッド車向けのLiイオン2次電池を生産する。GSユアサの経営戦略統括部(経営戦略・技術)課長の沢井研氏に,電池メーカーから見た市場動向や今後の方向性を聞いた。(聞き手は久米秀尚=日経エレクトロニクス)
――まず,Liイオン2次電池事業の現状を聞きたい。
2009年7月に三菱自動車が法人向けに販売を開始した電気自動車「i-MiEV」は,2009年度の予定販売台数である1500台を早々に売り切った。i-MiEVに電池を供給するリチウムエナジー ジャパンは,今後の需要増を見据えて生産能力を増強する。2009年度に電気自動車2000台相当だったものを2010年度には6000台分,2012年度には1万台分にする計画だ。
実は,三菱自動車以外の自動車メーカー,特に海外メーカーからの引き合いも強さを増している。彼らの要望をすべて受注していては,とても生産が追いつかない。ただ,電動車両の普及によってLiイオン2次電池市場が拡大することは歓迎するものの,どこまで電気自動車向けの事業に傾倒していくべきかについては判断が難しいところである。
――電気自動車普及のネックとされるのが,Liイオン2次電池の価格ともいわれる。
電池コストの内訳で大きなウエイトを占める一つが人件費だ。2009年6月に稼働したリチウムエナジー ジャパンの草津工場(滋賀県草津市)では,最新の製造設備を導入することで生産のフル・オートメーション化を実現した。これにより,電池価格をこれまでの半分に当たる10万円/kWhまで下げることができた。将来的には,量産効果や投資の回収などによって5万円/kWh程度まで抑えられるだろう。
――低価格化の別の方法として,材料を変更することが考えられる。
リン酸鉄(LiFePO4)を正極材料に用いたLiイオン2次電池の研究開発を進めている(図1)。これまでのマンガン酸リチウム(LiMn2O4)に比べて材料価格が安く,安全性を高められる特徴がある。ただ,LiFePO4は伝導率が低く,粒子を微細化したり表面をカーボンで被覆したりする必要があり,この手間と,材料価格を比較してメリットを見出せれば量産化できるだろう。性能そのものは実用化できるレベルにある。
価格をより抑えることができれば,用途の拡大を見込める。期待しているのが,鉄道や重機といった産業機器分野だ。鉄道用途では,架線レス鉄道車両や回生充電システム,ディーゼル・エンジンとのハイブリッド化などが挙げられる。このほか,港湾用クレーンや無人搬送車(AGV)でも徐々に採用事例が増えている。さらに,航空機や宇宙衛星など大型のLiイオン2次電池が活躍する場は多岐に渡ると期待している。
―― 次回へ続く ――
バックナンバー
- 第6回 日立化成工業:海外の売り上げが国内を上回るのは時間の問題だ 2010/01/26
- 第5回 三菱重工業:まずは産業機器や定置向けで足場を固める 2010/01/22
- 第4回 プライミクス:バッチ式から連続処理へ,自動車用途では必須に 2010/01/20
- 第3回 IHI:今後の市場成長を考えると,自動車用途に新規参入する余地は十分ある 2010/01/18
- 第2回 住友化学:耐熱セパレータやCoフリーの正極材料が重要な役割を担う 2010/01/14
- 第1回 GSユアサ:引き合いが強く,電池の生産が追いつかない 2010/01/12












