COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

最終回:みんなのミクになってみた(下)

根津 禎=日経エレクトロニクス
2010/01/14 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2008年3月10日号 、pp.125-127 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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(前回から続く)

 とはいえ,作品の多くは誰でも作れるような簡単なものである。プロが作るような高度な作品が必ずしも人気になるわけではない。「素人っぽい作品でも面白ければ人気になる。こうした作品なら自分でもできそうだと思い,参加ユーザーが増える」(ドワンゴ ニコニコ事業部 第一セクション セクションマネージャーの中野真)。

 投稿が増える秘密は,作品に対する視聴者からのコメントが動画内に表示されるニコニコ動画独特の機能にもある。作り手のやる気に火を付けるのだ。「ニコニコ動画の特徴はコメントが温かいこと。作り手をやる気にさせてくれる」(野尻)。コメントが心ないものばかりだと,初心者は一気にやる気を失ってしまう。一方で,面白いコメントはそれ自体で賞賛される。

 こうした仕掛けや文化は,「初音ミク登場前からニコニコ動画内で根付いていたもの」(中野)である。これが作品をみんなで作るという「共有感につながっている」(中野)と説明する。

ヒットの要因は「ネタ」化

 いわゆるアキバ文化に詳しい野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部主任コンサルタントの北林謙は「日本人は,何らかのおたくやマニアであることが多い。例えるならば,OSが同じで上位にあるアプリケーションが違うだけ。アキバ系の文化が好きじゃなくても,お互いの趣味について理解できる」と説明する。

ニコニコ動画では,作成するコンテンツの基になる「ネタ」を中心に,創作意欲とコメントが逆方向のスパイラルを描く。作る側と視聴する(評価する)側の両方に影響を与えながら創作がドライブされる。(図:みずほ情報総研の資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした環境だからこそ,異なる技能を持った「職人」が協力し合って,クリエーティブな一つの作品を作り上げる状況が生まれる。例えば,「【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」に合わせたイラストを描いて追加するユーザーがいたり,また別のユーザーがそれを組み合わせてプロモーション・ビデオ的な作品を作ったりするのである。みずほ情報総研 コンサルティング部コンサルタントの小林陽子は「企業の多くが求めているが,企業内にはなかなかつくれない体制」という点で注目する。

 同じくみずほ情報総研 コンサルティング部 シニアマネジャーの吉川日出行は,こうしたニコニコ動画に独特な創作体制を「ネタ・セントリック」と呼ぶ。真ん中に「ネタ」があり,投稿者の創作意欲と視聴者のコメントがお互いに影響し合いながら創作が進むからだ。「初音ミクはニコニコ動画にとって格好の『ネタ』だったからヒットした」(吉川)。

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