(前回から続く)

 「充電」の概念が大きく変わろうとしている。きっかけとなるのは,長寿命で急速充電可能なLiイオン2次電池の登場と,非接触充電技術の進歩である。長寿命で急速充電が可能な電池の登場により,必要最低限の容量の電池を搭載して短いサイクルで繰り返し充電しながら使う「ちょこっと充電」といった利用法が可能になりそうだ。さらに,電池の寿命が長くなるため,製品寿命まで電池の交換が不要となる。

 こうした利用方法に,非接触充電技術を組み合わせると,充電していることをユーザーに感じさせない機器を実現できる。新たな充電インフラの展開が進みそうだ(図1)。実際,長寿命で急速充電が可能な電池や非接触充電技術の開発は活発化している。電池については,電動車両に向けたLiイオン2次電池の開発が進んだことで,長寿命で急速充電可能なLiイオン2次電池が電池メーカーから続々と登場している。

【図1■急速かつ非接触充電が機器を変える】 急速充電可能な2次電池や非接触充電技術の進化は,充電インフラを大きく変え,新しい市場を創出する可能性を秘めている。
図1■急速かつ非接触充電が機器を変える
急速充電可能な2次電池や非接触充電技術の進化は,充電インフラを大きく変え,新しい市場を創出する可能性を秘めている。
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注目集める共鳴方式

 非接触充電技術では,電気自動車などへの充電にも使える大電力の非接触充電技術の開発が今,かつてないほど盛り上がっている。注目は共鳴方式の非接触充電技術である。

 磁界結合の共鳴を使った技術を米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が2007年6月に,米Intel Corp.が2008年8月に発表して大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。まだまだ伝送効率は40%台と低いものの,こうした技術を使うと走行中の自動車にも充電できる可能性がある。

 新たな共鳴方式の非接触充電も登場している。竹中工務店が開発中の,電界結合の共鳴を使った技術である(図2)。この技術は送電側と受電側を密着させる必要があるものの,水平方向の位置ずれに対応でき,現在実用化されているコイルからコイルへ電力を給電する電磁誘導方式の非接触充電技術で問題となる異物侵入時の加熱や電磁波,高周波といった問題が生じないメリットがある。しかも,電磁誘導方式と違い,フェライトやリッツ線コイルを用いないため,機器の重さやコストを低減できる。出力が大きな機器に対しても,接触させる面積を広げるだけで対応できるのも利点だ。

図2■電界結合方式で電力を供給
図2■電界結合方式で電力を供給
竹中工務店は,電界結合の原理を用いた給電システムを開発中である(a)。直列共振を用いた給電システムでは,100Wの電力を効率90%で白熱電球に給電することに成功している(b)。