いざモバイルへ

 HDMIにとって,携帯機器分野への進出は悲願とも言えるものだ。据置型のAV機器に比べて市場の成長性が高い携帯機器に採用されることで,HDMIの普及を加速させるという狙いがある。

 実は,HDMIが携帯機器への進出を図るのは,今回が初めてではない。2006年6月に発表された「HDMI 1.3」において,携帯機器向けの小型コネクタ仕様「Type C」を盛り込んでいた。HDMI陣営はこれにより,携帯機器へ広く普及させることを目指した。

 だが,そのもくろみは大きく外れた。携帯機器に搭載するには,まだコネクタの寸法が大きく,消費電力も高すぎるためだ。このため,Type Cは一部のビデオ・カメラや一眼レフ・カメラなどで採用されるにとどまっている。

 つまりHDMIにとって,2009年夏ごろまでに策定される次世代仕様は,携帯機器分野への再挑戦となる。HDMI陣営は,薄型の携帯電話機でも搭載できるような超小型コネクタ仕様を用意するなど,携帯機器市場の再攻略に最大限の力を注ぎ込もうとしている。

すべては載らない

 一方,USBの8年ぶりのバージョンアップとなる「USB 3.0」にとっても,携帯機器は非常に重要な市場である。給電機能を武器にして切り開いてきた同市場での存在を,USB 3.0の投入によってさらに盤石にする狙いだ。携帯機器での利用に向けた新たな低消費電力モードを盛り込んでいるのも,その表れである。

 しかし,ここに大きな問題がある。携帯機器の場合,すべてのインタフェースを載せるのが難しいということだ。実装面積やデザインの面で,パソコンや据置型AV機器に比較して,大幅に制約を受ける。このため,USB 3.0と次世代HDMIが共に搭載される携帯機器は一部の機種に限定され,大部分はそのどちらかに集約されるだろう。

 USB 3.0か,それとも次世代HDMIか。これまで数々のプラットフォームで繰り広げられてきたインタフェースの適者生存の争いが,今,手のひらの上で始まろうとしている。

パソコンやAV機器にも波及

 実はこの争いは,携帯機器分野だけにとどまる話ではない。パソコンや据置型AV機器における将来のインタフェース争いにも,大きく影響することになりそうだ。