加藤 敏春 氏
加藤 敏春 氏
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――温室効果ガスの削減といった地球温暖化問題は,世界的な課題です。シリコンバレーだけでなく,世界のどの地域にとっても「外圧」になる。にもかかわらず,シリコンバレーにとっての影響が大きいとお考えなのは何故でしょうか?

加藤氏 シリコンバレーには前述したような要素技術があり,そしてそれらを組み合わせたシステム技術がある。さらに,環境先進地域であるカリフォルニア州の環境規制に対応しなければならない。これだけの要素が集合した地域というのは世界でも非常に稀でしょう。確かに地球温暖化問題は世界共通の話ですが,シリコンバレーはそうした世界的な難問に対して,解を提供する準備ができている。そこが,ほかの地域と大きく異なるところです。

市場規模はITの3倍以上に

 逆に言えば,シリコンバレーには,そうした解を出すという役割が期待されている。だからこそ現在,クリーンテックやスマートグリッドのベンチャー企業が多数,シリコンバレーに誕生しているわけです。

 私は常々,こういう仮説を立てていました。これまでの「インターネット革命」の15年間は,シリコンバレーの情報技術が社会変革を起こしたわけですが,きっと次の15年間も,やはりシリコンバレーが主導するだろうと。今回のスマートグリッドという大きなうねりは,まさにそれに相当すると思います。

 スマートグリッドの市場規模は,おそらくインターネットを超えるでしょう。例えば,これまでの15年間のITの市場規模が,約7兆米ドルと言われています。一方で次の15年間のスマートグリッド関連市場は,20兆米ドルまで拡大するとみられています。つまり,現在のITの約3倍です。しかも,スマートグリッドの変革というのは,これからまだまだ長い期間続きます。少なくとも2050年,さらにもっと続くでしょう。温室効果ガスの削減や省エネルギーに向けた取り組みには,終わりがないからです。こうなると,市場規模は20兆米ドルでとどまるわけはない。

 私は,ワグナーのファンですが,今,華麗にして壮大なるオペラの幕が開いたという感じがありますね。

―― 次回へ続く ――