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第2回:ついに船出の電子ペーパー,消えない残像の課題

ソニーの読書端末は4万円

小谷 卓也=日経エレクトロニクス
2009/06/29 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2004年4月12日号 、p.35 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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現在の電子書籍端末の雛形といえるのが,ソニーが2004年4月に発売した「LIBRIé(リブリエ)」である。当初の狙いとは裏腹に販売は振るわず,2007年5月に生産を終了。2009年9月には,この製品向けのコンテンツ配信事業も精算している。しかしこの失敗を糧にソニーは2006年に米国で事業を立ち上げ,市場を先導する現在の地位を築いた。(2009/6/29)

 ソニーが2004年4月24日に発売する読書端末「LIBRIé(リブリエ)」。取扱説明書には,次のような注意書きがある。「画面書き換え時に残像が見えることがありますが故障ではありません」「画面が切り替わるときに一瞬チラつくことがありますが故障ではありません」。

 同端末は,ソニーが米E Ink Corp.や凸版印刷,オランダRoyal Philips Electronics社と2001年から共同開発を進めてきた電気泳動型の電子ペーパーを搭載する。液晶パネルを利用する場合に比べて端末は軽くなり,消費電力は小さくなった。コントラスト比や反射率といった表示性能も「新聞紙と同等」(ソニー)で,紙に印刷した文字を見るような自然さを実現できたとする。

 しかし,実際に発売する端末では,ユーザーが見慣れない不自然な現象が起きる。ページをめくるボタンを押すなどして次の画面に表示を切り替えようとすると,画面全体が素早く交互に白くなったり黒くなったりチラついた後,次の画面になるのだ。そして表示パターンによっては,その後も切り替え前に表示されていた文字や記号がうっすらと残る(図1注1)。これらの現象は,決して読書端末本来の機能に影響を及ぼすものではない。ただし,液晶パネルの表示に慣れたユーザーが違和感を覚えたり,故障と勘違いしたりする可能性はある。そう考えたソニーは,冒頭のような注意書きを盛り込むことにしたわけだ。

注1)残像が見える大きな理由は,表示を繰り返すうちに生じるマイクロカプセル内の電荷の偏りによって,同カプセルに封入したインクが所望の位置からズレてしまうことにある。表示の切り替え時にわざと白と黒を交互に表示させることで,電荷の偏りをできるだけ解消して残像を軽減しようとしている。

図1 切り替え前の画像がうっすらと残る
図1 切り替え前の画像がうっすらと残る
ソニーの読書端末「LIBRIé(リブリエ)」は,表示画面の残像という課題を抱えたまま発売となる。表示の切り替え前に映し出していた文字や記号がうっすらと残る。同端末は,6インチ型で画素数が800×600(精細度は約170ppi)の電子ペーパーを採用する。モノクロ型で,4階調の表示が可能。白や黒の部分よりも中間階調の部分の方が残像は目立つようだ。端末の外形寸法は126mm×190mmで,厚さは13mm。重さは190g(乾電池を含まない状態)である。電源には単4型の電池4本を使う。ACアダプタも利用できる。乾電池を利用する場合は,約1万ページの閲覧が可能という。価格はオープン。ただし,市場での推定販売価格は4万円前後という。

発売を決めた2つの理由

 開発チームは「端末をなるべく早く発売したいという意見と,残像といった課題を改良してから発売すべきという意見に分かれて激しい議論を繰り返した」(開発に携わったある関係者)。しかし,それでもソニーが発売に踏み切った理由は大きく2つある。

 1つは,電子書籍市場が2004年から急拡大するとの予測だ。それに合わせて準備を進めていた端末の発売をこれ以上遅らせるわけにはいかなかった。具体的には,2004年に約40億円の市場規模が2005年に約80億円,2006年には約160億円と倍々ペースで伸びるとソニーはみる。同社は読書端末の開発と同期し,出版社などと共同で電子書籍コンテンツの配信サービス会社「パブリッシングリンク」を設立しており,2004年4月1日にサービスを開始した。読書専用端末の競合としては既に,松下電器産業が「ΣBook」を発売している。

 もう1つの理由は,電子ペーパーの課題がそう簡単には改善できないと踏んだこと。残像については,以前から指摘されていた。E Ink社は「材料の調整で残像の改良は可能」とする。ただし,材料の変更となると製造プロセスの条件設定や信頼性試験などをやり直す必要がある。短期間で量産に持ち込むことはたやすくない。

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