次は,応答速度の向上,フレキシブル化といったところでしょう。フレキシブル化は曲げることが狙いではなく,薄くて割れにくいものにするのが目的です。そして最後にカラー化。これについては中途半端では受け入れられないので,まずは白黒のコントラスト比向上が先決です。そうすれば,カラーの性能も向上しますから。

――ベンチャー企業であるE Ink社としては,事業規模が非常に大きくなってきました。

 確かにこの会社は,ベンチャーとしては既に,第4コーナーに差し掛かっていると思います。ベンチャーのゴールである二つの選択肢,IPOか M&Aに向けて,少なくとも2009年には,そのゴールの姿がはっきりと見えていると思います。ですから,どちらのゴールに到達するにせよ,2008年は我々にとって勝負の年になるでしょう。

インタビューを終えて

 桑田氏に初めてお会いしたのは,2003年5月に米国で開催された展示会でのこと。以来,さまざまな展示会や取材でお話する機会がありました。米国のベンチャー企業で活躍し,世界中の顧客を駆け回っている姿から,まさに「世界人」という印象を持っていました。

 そんな桑田氏と数カ月前にお会いしたとき,同氏は私の印象を変える思いを口にしました。「日本を何とか元気付けたい。日本に頑張ってもらいたい。そのために,何かできないかと考えているんです」――。インタビュー中にもあるように,例えば電子ブックではソニー以降,新規市場を創造しようと参入する日本メーカーが現れていません。電子ペーパーという新デバイスを提供する立場から,「日本人」として普段感じている日本メーカーへの歯がゆさの裏返しでもあるのでしょう。六本木ヒルズで実施したインタビュー後,窓からは神宮球場が。桑田氏は私と同じ「広島ファン」とのこと。またまた,氏への印象が変わった瞬間でした。(小谷)

桑田 良輔(くわだりょうすけ)
米E Ink Corp. Vice president Asia Pacific region
大学卒業後,米DuPont社の日本法人に入社。アジア太平洋地域において,ディスプレイ(PDPやFED,SEDなど)向け材料事業の企画部長などを歴任。2001年12月,E Ink社にMarketing Directorとして入社。2008年2月より現職。当初から社内唯一の東洋人幹部として活躍,アジア太平洋地域の市場開発を一手に背負う。広島県出身。