新車販売台数が落ち込み続け,歯止めがかからない。日本自動車販売協会連合会によると,2009年2月の新車販売台数(軽自動車を除く)は21万8200台で,前年同月比32.4%の減少となった。2月としては第1次石油危機の1974年以来,35年ぶりの低水準という。米国市場はもっと悪い状況だ。2009年2月には今回の金融危機が起きて以後,初めて前年同月比で4割以上落ち込み,68万8900台だった(米Autodata Corp.調べ)。

 このように自動車市場は今,世界的な規模で冷え込み,出口が見えない状況にある。ただ,これまで着々と進んできたクルマの電子化が後退することは決してない(図1)。その速度は一時的に若干落ちるかもしれないが,まだまだ進むことは確実である。安全性や快適性の向上,さらには環境対応…。自動車開発において今後も重視され続けるであろうこれらの課題は,もはやエレクトロニクス抜きでは解決できないためである。

【図1 クルマの電子化が自動車業界を変えた】従来,ガソリン車が主流の自動車業界はいわゆる「ケイレツ」に代表されるようにクローズドな世界であり,他社はもちろん,他業界との連携などもほとんどなかった。これが1990年代に入り,クルマの電子化が進むに従って企業間や業界間の壁が崩れ始め,オープンな世界へと向かっていった。
図1 クルマの電子化が自動車業界を変えた
従来,ガソリン車が主流の自動車業界はいわゆる「ケイレツ」に代表されるようにクローズドな世界であり,他社はもちろん,他業界との連携などもほとんどなかった。これが1990年代に入り,クルマの電子化が進むに従って企業間や業界間の壁が崩れ始め,オープンな世界へと向かっていった。
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潮目が変わった1997年

 今でこそ,多くのエレクトロニクス・メーカーが自動車分野に参入しているが,一体いつごろからクルマの電子化は注目されていたのだろうか。本誌に掲載した自動車エレクトロニクス関連記事で最も古いものはどんな内容なのか,調べてみた。最古の記事は創刊前の1970年12月1日に発行した「日経エレクトロニクス 特別情報版」に載っていた。「第17回東京モーターショー」に関する1ページのレポート記事である。

 読み進めると,こんなくだりが出てきた。「全般を通じれば,自動車業界が現在の自動車の抱える四つの技術問題,『自動車の性能向上』『自動車事故への安全対策』『自動車公害の防止』『交通管制の効率化』をエレクトロニクス技術の導入で乗り切る方針を,このショーで指し示そうとしたことは読み取れた」――。正直,驚いた。現在の課題と全く同じではないか。

 ただ残念ながら,その後20数年もの間,本誌で自動車エレクトロニクスに関する記事は,それほど多くは登場しない。エレクトロニクス技術を活用することで,クルマは「安全」「快適」「環境」を追い求め続けてはいるものの,その動きは加速することなくゆっくり進んだため,記事として取り上げる機会が少なかったのである。