最後の競争相手といえるのが,100Mビット/秒の100VG-AnyLANである。同じ伝送速度のEthernet規格である「100BASE-TX」と,100Mビット/秒の標準LANの座をめぐり,業界を2分する争いになった。100VG-AnyLANはデマンド・プライオリティと呼ぶ優先制御が可能な新しいアクセス制御方式を導入し,早い者勝ちの単純なCSMA/CD(carrier sense multiple access with collision detection)方式を使い続けている100BASE-TXとの違いをアピールした。しかし,この競争でも,シンプルな仕組みの100BASE-TXに軍配が上がった。多くのメーカーがシンプルな100BASE-TXを支持し,スイッチング・ハブやインタフェース・ボードなどの製品が市場にどっとあふれた。押し出される格好で,100VG-AnyLANは市場から消滅した。

Ethernetを目標に高速化した無線LAN

 100BASE-TXで有線LANの標準の座を勝ち取った1990年代後半,Ethernetは別の方向に進化を始めた。無線LANである。1997年に最初の標準規格「IEEE802.11」が登場した(図4)。

図4 無線LANの高速化の道のり
図4 無線LANの高速化の道のり

 今の状況からは想像しにくいかもしれないが,IEEE802.11が出たころの無線LANは,全くの泣かず飛ばずだった。最大データ伝送速度が2Mビット/秒と,既に旧世代となりつつあった10BASE-Tの10Mビット/秒よりもはるかに遅かったためである。

 流れが変わり始めたのは,次の標準規格が登場した1999年のこと。11Mビット/秒の「IEEE802.11b」が標準化された。同年,当時の米Apple Computer,Inc.が11b対応の無線LANアクセス・ポイント「AirPort」(日本名AirMac)を手ごろな価格で発売し,一気にブレークした。

 しかし,実際の使い勝手では「有線LANよりも遅い」という状況は改善されなかった。規格上の最大データ伝送速度こそ11Mビット/秒と10BASE-Tに大差ないものだったが,IEEE802.11bの実効的なデータ伝送速度(スループット)は約6.2Mビット/秒に落ちる。これは,無線LAN固有の情報をやりとりするためのヘッダによるオーバーヘッドや,衝突を回避するアクセス制御技術であるCSMA/CA(carrier sense multiple access with collision avoidance)による待ち時間などが生じるためである。