第2世代デジタル・カメラの萌芽が始まった。
中核機能は,高速連写技術と画像認識技術を
用いたオート・シャッターである。
画像認識技術は,写真を「見る」機能も変えるだろう。
もはやカメラ自体はどの企業でも作れる。
今,問われているのは,ユーザー体験を刷新する企画力である。
それをいち早くものにしたメーカーが,第2世代の勝者になる。

 デジタル・カメラは未熟である。誰もが使う民生機器として,完成度はテレビやHDDレコーダーに遠く及ばない。デジタル・カメラ評論の第一人者である山田久美夫氏はいう。「なぜ,ごく一般的なユーザーがピンぼけ,手ブレといった用語を日常的に使っているのか。失敗するのが当たり前。そんな商品しか,まだ存在しない」。

 無論,カメラ・メーカーが努力を怠ってきたわけでは決してない。失敗写真を抑制できる商品を,長年にわたって生み出し続けて生きた。銀塩カメラではキヤノンがAE(自動露出)を,コニカがAF(オートフォーカス)を普及させた。カシオ計算機の「QV-10」が普及の先駆けとなったデジタル・カメラもそうだ。すぐに撮影結果を見られるのでユーザーは撮り直しができる。近年,普及した手ブレ補正も,高感度も,失敗抑制に有効だ。

 だが,それでも撮影はやはり難しい。我が子のかわいい一瞬を撮れなくてガッカリする。こんな体験を誰しもが幾度となく繰り返している(図1)。

図1 カメラや写真を見る体験は進化する
図1 カメラや写真を見る体験は進化する
これまでのデジタル・カメラは一般に,シャッターチャンスを逃すといった失敗写真を量産しがちだった。せっかく撮りためた写真を見るにも手間をかけなければならなかった。こうした課題は今後,どんどん解決されていく。

 こうした状況が変わろうとしている。それに必要な技術,すなわちCMOSセンサを用いた「高速連写技術」と,顔認識や撮影シーン認識などの「画像認識技術」の実用化と進化が始まっているからだ注1)。両方の技術を使って適時に自動的にシャッターを切る「オート・シャッター機能」や,高速連写後の画像の要/不要を選別する「画像選択支援機能」がトレンドになる。

注1) 松下電器産業は2007年8月に発売した機種から「おまかせiA」と呼ぶ,撮影シーン判定および自動撮影条件設定機能を備えている。おまかせiAが自動判定する撮影シーンは5種類。昼間のポートレート(人物)撮影,夜間のポートレート撮影,風景撮影,動体撮影,接写,である。シーン判定のパラメータは,フレーム中の顔やその動き,照度,撮影距離などの有無や程度である。