世界に通用する先端SoC(system on a chip)向けの製造力を持っている企業はどこか――。こう聞かれたら多くの人は,台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)や,米IBM Corp.-シンガポールChartered Semiconductor Manufacturing Ltd.連合の名前を挙げるだろう。これらの大手Siファウンドリーには最先端のプロセス技術はもちろん,豊富なIP(intellectual property),一貫性のある設計環境,巨大な製造能力がそろっている。
本来ならばここに,日本の独立系Siファウンドリーの名前が入るはずだった。実際,そのために日本政府は2001年度の第2次補正予算で315億円を投入し,NECの相模原事業場に90nm世代の300mm試作ラインを構築した。その運営会社として日本の大手LSIメーカー11社は「先端SoC基盤技術開発(Advanced Soc Platform Corp.:ASPLA)」を2002年に共同で設立した。
ASPLAはその名の通り,先端SoC向けの設計・製造技術を整備する企業。その試作ラインで確立した技術を量産ラインにコピーすれば,TSMCやIBM社と戦えるSiファウンドリーができるはずだった。この日本版Siファウンドリー構想は,LSIメーカー各社の出資で工場(ファブ)を設立し,各社が共同で利用する予定だったため,当初は「共同ファブ」構想と呼ばれた。この構想は今のところ実現していない。おそらく,この先も難しいとの見方がほとんどである。