近い将来,無線システムのスタンダードはソフトウエア無線になる。
技術,サービス,電波資源のすべての面で必要とされ始めた。
RFアナログ回路は統合技術が成熟しつつある。
アンテナも含めたリコンフィギュラブルRF技術を使うアーキテクチャで
鍵になる部品の性能が向上し,数年後にも端末の実現が見込めそうだ。
コグニティブ無線の研究にも,行政が自ら乗り出し始めた。

 アンテナを複数の無線システムで共用する場合,無線モジュールの統合も進めた方が,筐体の小型化や軽量化につながりやすい。複数の無線システムを同じハードウエアに統合してそれらをソフトウエアで使い分ける技術は,一般にソフトウエア無線と呼ばれる。実は,ソフトウエア無線の実現はさまざまなメーカーや事業者の共通の目標になっている(図1)。

図1 立場,動機は違えどゴールはほぼ同じ
図1 立場,動機は違えどゴールはほぼ同じ
チップ・メーカーや無線機器メーカー,通信事業者,家電や自動車のメーカー,電波政策などは,それぞれ立場や目的は違ってもソフトウエア無線などを実現する方向に向かっている。

 例えば,無線用ICや機器メーカーにとって無線システムの統合は,小型化によるデザインの向上やコスト削減というメリットを得る手段となる。ルネサス テクノロジは,同社の携帯電話機向けチップセットの開発が,複数の無線方式や異なる周波数帯に対応した無線用回路を,集積していく過程そのものだったとする。2008年2月には,GSM方式とW-CDMA方式のRFトランシーバ回路を1チップ上に集積した(図2)。「低雑音アンプ(LNA)以外は,A-D/D-A変換器を含むほとんどの回路をGSMとW-CDMAで共用し,ソフトウエア的に切り替えて利用する。我々にとって,ソフトウエア無線は研究レベルのものではなく,既に実現していること」(ルネサス テクノロジ システムソリューション統括本部 システムソリューション第二事業部 RFIC設計部 部長の田中聡氏)。

【図2 無線方式のハードウエアの統合は既に始まっている】ルネサス テクノロジが進めてきた携帯電話機向けRFトランシーバの統合。今後のロードマップと併せて示した。2008年2月に発売したRFトランシーバICは,GSMとW\-CDMAを1チップ上に集積しており,部品の面積を従来の約130mm2から50mm2へと,大幅に減らしている。同社は5年後をメドにLTEやWiMAX,さらにその数年後にはUWBを含むほとんどの無線を1チップ化する計画である。
図2 無線方式のハードウエアの統合は既に始まっている
ルネサス テクノロジが進めてきた携帯電話機向けRFトランシーバの統合。今後のロードマップと併せて示した。2008年2月に発売したRFトランシーバICは,GSMとW-CDMAを1チップ上に集積しており,部品の面積を従来の約130mm2から50mm2へと,大幅に減らしている。同社は5年後をメドにLTEやWiMAX,さらにその数年後にはUWBを含むほとんどの無線を1チップ化する計画である。
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