実演の様子。左上に画面例を示した。
実演の様子。左上に画面例を示した。
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画像・音声認識機能付きルーム・ミラー。鏡の右側は,可視光を反射し赤外線を透過する。写真では近赤外線LEDが写り込んでいるが,人の目では見えない。近赤外線カメラは近赤外線LEDで囲まれた中央部に備える。
画像・音声認識機能付きルーム・ミラー。鏡の右側は,可視光を反射し赤外線を透過する。写真では近赤外線LEDが写り込んでいるが,人の目では見えない。近赤外線カメラは近赤外線LEDで囲まれた中央部に備える。
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ETC機能付きルーム・ミラー
ETC機能付きルーム・ミラー
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このほか,プリズムを使って左右と下の3方向を同時に撮影できるカメラ・モジュールを展示した。
このほか,プリズムを使って左右と下の3方向を同時に撮影できるカメラ・モジュールを展示した。
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 村上開明堂は,画像認識機能や通信機能などを備えたルーム・ミラーを試作し,「第39回東京モーターショー」で公開した。試作品は2つある。1つは,画像と音声の認識に向けて,近赤外線カメラと近赤外線LED(発光ダイオード),マイク,スピーカー,画像・音声処理ボードを内蔵したものである。

 例えば,運転者が右サイド・ミラーを見たことを検知したときに,運転者が「上」と声を発すると右サイド・ミラーの鏡が上方を向く。まぶたの開閉時間を測定し,一定時間以上閉じていると,居眠りに対する警報を鳴らす。画像認識には,VGA(31万画素)級で撮った映像を間引いて用いる。画像認識を担うソフトウエアは,旭化成 情報技術研究所が開発した。音声認識には,旭化成が販売中のソフトウエア「VORERO」を転用した。

 もう1つの試作品は,ETCの処理機能と,ハンズ・フリー通話機能を備えたルーム・ミラーである。クレジット・カードのリーダー/ライターやETC用通信モジュール,Bleutooth用通信モジュール,マイク,スピーカなどを内蔵した。一般にETC機器はダッシュボードの上に設置することが多い。この状態では「クレジット・カードが車内にありますよと泥棒に宣言しているようなもの。防犯面で不安を感じるユーザーは少なくないはずだ。ルーム・ミラーと一体にすれば,そう簡単には気付かれなくなる」(説明員)。

「すっきり収めるにはルーム・ミラー」


 自動車業界では「ルーム・ミラーが占めている『土地』の価値が高騰している」と近年いわれる。その理由の1つが衝突予防や快適性の向上に向けてカメラなどを搭載する事例が増えていること。例えば白線検知用やドライブ・レコーダ用のカメラは通常,ルーム・ミラーの近くにレンズを車外に向けて設置する。居眠り検知用のカメラも同様の場所にレンズを車内に向けて設置するのがよいとされる。運転者の目に近いだけでなく,レンズの前に物を置かれる心配がないからだ。ハンズ・フリー通話機器などを追加するときも,既存のルーム・ミラーを同機能を内蔵したミラーに交換すれば,見苦しく配線をはわせずに済む。

 村上開明堂は,こうした動向を踏まえて自動車用ミラーの大手として培った販路を生かし,是非このチャンスをモノにしたいと意気込む。「量産出荷を念頭に置いた複合機能のルーム・ミラーを作って公表したのは,我々が初めてではないか。展示品と同様の機能を持った量産品は,既存の機器で信頼性が実証された部品を駆使することで素早く開発できる」(説明員)。