エンジンを持たず、冬場の暖房用の熱源がない電気自動車(EV)。冬場は、暖房に電力が必要となることから、充電1回当たりの航続距離が短くなるという欠点がある。そこで、バッテリーやパワーコントロールシステム(PCS)の廃熱を回収してEVの暖房に使い、バッテリーの充電率(SOC)の推定精度を上げて、バッテリーを容量ぎりぎりまで使えるようにする。そんなEV向けの熱・電力のマネジメントシステムを提案したのが、カルソニックカンセイだ。同社によれば、同システムを適用することでEVの航続距離を最大で25%延ばせるという。同社は同システムの構成イメージを示すモデルを「人とくるまのテクノロジー展2015」(2015年5月20~22日、パシフィコ横浜)に出展した(図1)。

図1●カルソニックカンセイが提案したEV向けの熱・電力のマネジメントシステム
暖房に電力が必要となる冬場に、充電1回当たりの航続距離を最大で25%延ばせる。右上が廃熱回収用のプレートを付けたバッテリー、左上がカーエアコン、中央右がチラー、中央真ん中が電動コンプレッサー、中央左が水冷コンデンサー、右下が廃熱回収用のプレートを付けたPCS、左下が高電圧温水ヒーター。
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 同システムで暖房に使うのは、ヒーターコアを搭載するカーエアコンだ。同社の説明員によれば、「日産自動車の『リーフ』では暖房に外気ヒートポンプを使っている。この方式は、水を流すヒーターコアではなく、高温高圧の冷媒を流すインナーコンデンサーが必要となり、カーエアコンにガソリン車のものを流用できない。EVでは、コストの抑制が求められているので、ガソリン車と共用可能なヒーターコア方式を選定した」。

 同社が提案する熱・電力のマネジメントシステムでは、ヒーターコアに送る水を、まず水冷コンデンサーで温める。さらに、その水温が不足している場合は、電熱線(シーズヒーター)を使った高電圧温水ヒーターでさらに加熱し、ヒーターコアに送る。