講演するNTTドコモの檜山聡氏
講演するNTTドコモの檜山聡氏
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新デバイスは生体ガスに着目

 NTTドコモはビッグデータ解析とセンサーデバイスを両輪としてヘルスケア事業を推進している。講演では、開発中の新デバイスも一部紹介した。生体ガスの成分の1つ「アセトン」を計測するものだ。

 生体ガスとは、口から呼気として出たり、皮膚から自然に出たりするもので「血液や尿に匹敵する生体情報の宝庫」(檜山氏)。血液や尿よりも採取が簡単で、測定を受ける人に抵抗感が少なく、採取に当たって穿刺などの必要がないため安全で、資格も不要。家庭で測定してヘルスケアに役立てるのに適しているという。

 200以上存在する生体ガスの成分から、NTTドコモは脂肪の燃焼と相関の深いアセトンを選んで、測定デバイスを開発した。アセトンは、血液や呼気に含まれる濃度が高いほど、脂肪の減少の度合いが大きいと考えられ、測定データはダイエットのサポートや糖尿病の予防、経過観察などに使えるという。

 呼気に含まれるアセトンは通常、濃度が0.1ppmと低いため、これまで測定には、医療機関などに設置したガスマトグラフィ装置を使っていた。電子レンジ大の装置で、水素やエタノールなどの干渉ガス成分を分離して測定するのが通例だった。

 NTTドコモは、家庭で手軽に計測できるよう、装置の小型化に取り組んだ。具体的には、ガス成分に対する感度特性が異なる2種類の半導体式ガスセンサーなどを用いて、干渉ガスの影響を補正する仕組みを考案した。成分分離の必要がなくなったことで、試作機は65mm×100mm×25mmと、一般的なガスマトグラフィ装置の約1/100まで小さくできた。この装置に5~6秒、呼気を吹き込むだけでアセトンを測定できるという。

 測定したデータはBluetoothでスマートフォンなどに送信。Android端末向けの専用アプリにより、測定結果や、そのデータから推定される「空腹度」や「脂肪燃焼状況」などを視覚的に表現する。「あと一息で脂肪が燃えます。運動を心がけて!」などのメッセージも表示され、ダイエットを効果的に行うのに役立つという。

皮膚アセトン測定器も開発中

 NTTドコモは皮膚ガスに含まれるアセトンを計測するデバイスの開発も進めている。センサーデバイスが実現して、リストバンド型などのウエアラブル機器に実装できれば、呼気を吹き込むという能動的な作業なしに、身に着けて生活するだけで自動的に設定時間ごとに測れるようになる。

 皮膚ガスに含まれるアセトンは、呼気に含まれるアセトンの1/10ほどの濃度になるため、見た目上の濃度を高めて測定する工夫を施している。具体的には、吸着材を使って2分間ほど吸着した後に、吸着材を加熱して、集めたアセトンを一気に放出することで測定しやすくするという。