「ISSCC 2015」のTechnology Direction(次世代回路・システム分野)領域では、バイオメディカル、近距離無線(RFIDや人体通信など)、Si以外の材料(フレキシブル材料やGaNなど)の特性を最大限に引き出す新回路やシステムの提案など、将来発展する可能性がある領域の発表が多数行われ、各セッションとも活発な討論がなされた。

 特にバイオメディカル分野を扱ったセッション21(Innovative Personalized Biomedical Systems)の人気が高かった。講演会場は立ち見であふれ、終了後も多くの研究者が講演者への質問に列をなすなど、熱気にあふれたセッションとなった。

 このセッション21では、呼気による肺がん検査、血液検査、緑内障検診など様々な用途向けのCMOSセンサー・MEMSセンサー技術の発表が多数あった(論文番号21.5、21.6、21.7)。さらにTechnology Directionの発表全般に言えることであるが、これらの技術はセンサー単独の発表ではなく、制御部や外部インターフェースなども練られており、システムとして完成度の高い提案になっていることも特徴である。

 また、人体に埋め込んで使うなど、現在のウエアラブル端末よりもさらに厳しい電力・通信環境を想定していることが多いため、超低電力化技術や電力管理(エネルギーハーベスト)技術、近距離無線技術(RFIDや人体通信など)のレベルも高くなっている。

 例えば、熱などで発電可能にする電源回路やWakeup用無線レシーバーなどを混載した加速度センサー端末向け超低電力IoTチップ(論文番号21.3)、トランジスタの閾(しきい)値より低い電圧(0.6V)動作が可能なアナログフロントエンド技術(論文番号21.2)などである。低電力回路技術やIoTの研究で有名な米UC Berkeley大のJan Rabaey教授も、イブニングセッション「Brain-Machine Interfaces: Integrated Circuits Talking to Neurons」において、「Circuits and Systems for Implantable Brain Monitoring」と題した講演を行うなど、欧州や米国では、これまで積み上げてきた低電力回路技術などを駆使し、バイオメディカル分野を発展させていこうとする思いが感じられた。