自動車部品メーカーの巨人、ドイツBosch社は世界中で幅広いシェアを誇る。将来の自動車業界を占う上で、同社の一挙手一投足から目が離せない。「オートモーティブワールド2015」(2015年1月、東京ビッグサイト)に合わせて開かれたBosch社とのインタビューにおいて、同社取締役のDirk Hoheisel氏と日本法人であるボッシュ代表取締役社長のHerbert Hemming氏、ボッシュ執行役員オートモーティブエレクトロニクス事業部事業部長兼AE-BE開発部部長の石塚秀樹氏に、今後の自動車業界の展望について聞いた。

図1◎インタビューに応じるBosch社取締役のDirk Hoheisel氏(右)と、日本法人ボッシュ代表取締役社長のHerbert Hemming氏(左)
図1◎インタビューに応じるBosch社取締役のDirk Hoheisel氏(右)と、日本法人ボッシュ代表取締役社長のHerbert Hemming氏(左)
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――将来の自動車技術で、Hoheisel氏自身が期待することは何か。

Hoheisel氏 私が期待するのは、ただ単に移動するだけの技術ではなく、まさに日常生活の一部になっているような自動車技術だ。例えばスーパーマーケットの近くを通ったとき、自宅の食料品の残量に応じて買い物リストを教えてくれるようなものだ。日常生活に融け込み、さまざまなサービスを提供できるようなものを期待する。

 当社の技術を紹介すると、「mySPIN」というスマートフォンと車両のインフォテイメントシステムを統合するソフトウエアを利用すれば、家に帰宅するときに自宅の冷暖房をオンにするような機能は実現できる。この例でも分かるように、あらゆるものにセンサーが使われ、それらがつながることで可能性が広がりつつある。

――昔の自動車技術の開発と比べて、現在のBosch社で取り組みを変えたことはあるか。

Hoheisel氏 新しいアイデアを外から取り入れることが重要な課題になっている。それを見越して、10年前から高付加価値な製品にはオープンOSのLinuxを使うことを決定している。オープンソース型のLinuxを使うことで開発をゼロから始めなくて済むからだ。使える物は使う。自社で必要なものだけ付加価値を付けて開発するという体制を実現したい。

 例えば、mySPIN向けアプリケーションの開発にハッカソンを活用したことがある(関連記事)。これは、ハードウエアを含む基本的なプラットフォームを提供することで、外部から色々な意見を取り込むことができた良い例だ。余計な労力を減らしコストも下げられるので、オープン化の取り組みは今後ますます進むだろう。

 しかし、その上で差異化や特徴を出す余地は十分にある。多くの顧客はコストを下げたり、個数を低減したりして標準化を進めているが、そうした中でいかに自社らしさ・差異化を達成するかについて工夫している。

 だが、何でもオープンにすればよいというものではない。特に、セキュリティーは非常に気を付けなければならないと考える。