ラスベガス経由、デトロイト行き――。自動車のエレクトロニクス化の急速な進展が、新年早々に米国で開催される展示会の参加する人の流れを変えている。2015年1月6日(米国時間、以下同)に開幕する「2015 International CES」と、その翌週に開催される「NAIAS 2015」(デトロイトモーターショー)をハシゴする自動車業界やエレクトロニクス業界の関係者が増えているのだ。

2015年のCES開幕を待つラスベガスの夜景
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 エレクトロニクスと自動車。二つの業界の連携が強まっていることを端的に表しているのが、今回のCESで基調講演に登壇する企業の顔ぶれだ。昨年のドイツAudi社に続き、今回はドイツDaimler社と米Ford Motor社が基調講演を務める。Daimler社は会長のDieter Zetsche氏が5日の夜、Ford社は社長兼CEOのMark Fields氏が6日にそれぞれ登壇する。このほか、トヨタ自動車やドイツのAudi社、Volkswagen社などが記者発表会を開催する予定である。

 クルマと同様に今回のCESで注目を集めるもう一つのトピックは、ウエアラブル端末をはじめとするインターネット端末の多様化だ。いわゆる腕時計(スマートウオッチ)やリストバンド型をはじめ、メガネ型、指輪型など多くのウエアラブル端末の登場が見込まれるほか、家庭内や外出先にあるさまざまなモノをインターネットにつなげる動きが加速するだろう。

 この分野の主役は、少なくとも今回のCESにおいては大手メーカーではなさそうである。欧米を中心に星の数ほど生まれているスタートアップ企業が提案する新しいライフスタイルが関心を集めることになるだろう。インターネットのクラウド環境を利用するハブとなるスマートフォンの普及と、センサーや無線通信技術の価格低下を背景に、多くのスタートアップ企業が挑戦できる環境が整ったことが大きい。

 CES開幕に先立って4日に米CEA(米家電協会)が開催した記者説明会では、同協会のChief Economistを務めるShawn DuBravac氏が「物理的な空間をデジタル化すること」を2015年の大きなトレンドの一つとして挙げた。つまり、自動車分野を含めた広い意味での「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」である。

 人の動きや身体の情報、温度・湿度のような周囲の環境に関するデータ、そしてモノの状態を表す情報――。これらをクラウド上で連携させることで新しいデジタル社会を形づくる。「これまでは『技術的に可能である』という段階だったが、具体的なユースケースを考えるフェーズになった」(同氏)。物理空間のデジタル化とは逆の動きも本格化している。デジタルデータから物理的な3次元形状を作り出す3Dプリンターも、昨年以上にCESの会場をにぎわせることになりそうだ。こうしたリアルとクラウドをつなぐ本格的なスマートライフの提案に向けた双方向の動きが、今回のCESの大きな注目ポイントになることは間違いないだろう。