「ライフイノベーションとこれからのヘルスケアシステム」と題して講演した横浜市立大学の五嶋良郎氏
「ライフイノベーションとこれからのヘルスケアシステム」と題して講演した横浜市立大学の五嶋良郎氏
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 「医療の専門家以外の人が医療に参加することで、医療は今よりもっと良くなる」――。パシフィコ横浜で開催中の「次世代ヘルスケア展」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス、2014年10月29日~31日)において、横浜市立大学 学術院医学群 教授で副学長の五嶋良郎氏が、こんな主旨の講演を行った。

 五嶋氏は、日本では社会や産業、学問のタコツボ化が進み、医療も同様に、医師や看護師、薬剤師などの専門性が高まってきたと説明。医療の高度化は歓迎すべきことだが、結果として医療を“施す側”と“受ける側”に、人々が二分されてしまった側面があると指摘する。

 一般市民は医療に当事者意識を持てなくなり、「医療は専門家に任せておけばいいもの」という考えが根付いてきたと五嶋氏はみている。その結果、優れた医療技術が十分に生かされないことがあるという。「例えば、多くのがんは早期発見によって治る病気になってきたが、患者がかなり進行した段階になって病院へ来るケースが今も後を絶たない。技術はもちろんだが、がんを治すには社会システムも必要だ」(五嶋氏)。

 五嶋氏は、医療界で現在進行中のパラダイムシフトとして、(1)治療から健康のケア(予防)へ、(2)提供から協働へ(かかりつけ医を中心としたケアチーム)、(3)病院から地域へ、の3つを挙げる。これを加速するためにも、受益者(患者、一般市民)が医療に貢献することが重要だと持論を展開する。

 受益者の医療への貢献とは、医療に興味を持ち、理解し、ケアの価値の最大化に努めることや、医療リテラシーを持つことだという。「現場の医療従事者は病気の患者を治療することで手いっぱいの状況だ。患者と医師の対立構造ではなく、社会全体で医療に取り組むべき」(同氏)。