米国ワシントン州シアトルで開催中の、エレクトロニクスのテストに関連した国際イベント「ITC(International Test Conference)2014」(2014年10月19日~24日)。そのセッション2はアナログのテストをテーマにしていた。セッションタイトルはModeling and Measuring Complex Analog Behaviorsである。

 このセッションでは3件の講演があった。以下でそれぞれを紹介する。最初は招待講演である。登壇したのはITC 2014開催地の地元のUniversity of Washingtonで教授を務めるMani Soma氏。講演タイトルは「Analog Fault Models: Back to the Future?」(講演番号2.2)だった。

 ITCでは、過去20年近くアナログ故障モデルについて議論されてきた。そのような状況に対し、Soma氏は「まだ実用的なものはない。でも本当にアナログ故障モデルは必要なのか。これからもこの問題を議論していくべきなのか」と問題提起をした。これまで提案されたものは大別すると、欠陥ベースのモデル、パラメトリックモデル(動作するが素子値が規格外)、機能故障モデルに大別できる。

 ただし、デジタル回路での縮退故障モデルのように、広く認められて使われているものはない。アナログ回路は、差動構成など冗長性があるため、少し故障があっても全体として動作してしまうことが多々あり、故障検出や故障モデルの定義は基本的に難しい。しかし、アナログ回路のテスト信号生成やDFT設計には、標準的なアナログ故障モデルがあったほうが、技術開発が容易になる。また、設計検証にも有用であり、設計者とテスト技術者の間のインターフェースにもなる。

 筆者は半導体デバイスモデリング技術にも少しかかわっているが、工学設計でのモデルの重要性について考えさせられた。