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 「米Google社は、多分自動車自体はどうでもいいと思っている。人の全て、5W1Hをコントロールしたいと思っていて、その要素の1つにクルマがあるのでは」。ジャーナリストの桃田健史氏は、2014年5月28日に開催されたセミナー「シリコンバレー発、つながるクルマの最前線 ~スマホ連携、車両管理、自動運転で新たな魅力を創り出す~」の冒頭において、「シリコンバレーでクルマ開発に何が起きているのか?」と題して講演した。

 これまで自動車に縁のなかったシリコンバレーで、Googleが自動走行車の開発など、ITを自動車と連携させるプロジェクトを始めている。日系の自動車メーカーも相次いでシリコンバレーに拠点を設立したり、既存拠点を拡充したりしているが、実際に現地で何が進んでいるのか非常に分かりにくい。シリコンバレーで企業家やベンチャーキャピタルの活動が盛んだといっても、彼らは自動車に関する限り「おれたちはまだ大したことはやっていない」と思っている。

 そのため、この2~3カ月、銀行、証券、コンサルタント会社から講師に頻繁に声がかかる。そこで聞かれるのは「自動車産業はやっぱりもう終わりですか」「Googleは次に何をやろうとしているのですか」ということ。確かに、自動車の需要はこれから新興国を中心に増えるといいながら、政治的な不安定さなどにより順調に市場が拡大するかどうか分からないし、電気自動車の普及も世界的には思ったほど進んでいない現状がある。ただ、スマートフォンは世界中で1人1台に行き渡る状況に近づいており、そろそろ頭打ちになるかもしれない。IT産業にとって、自動車はスマホに変わって安定成長する大きな通信端末であるから、自動車産業への参入を図るのは道理である。

 Googleなど、シリコンバレーで自動車に注目している人々は何をするつもりなのか。非常に大きな絵を描いており、単純にいうと「全部」だと思う。人の全てをコントロールしたいと思っているようだ。移動はその1つであり、関連して位置情報や地図情報を押さえることは重要だ。今後はウエアラブル端末の時代だとか言われるが、実は車自体が「モビルスーツ」のようなもの。車は大きなウエアラブルギアである、とIT企業は捉えているのではないか。